考察

Youtubeをめぐる2つの動き

Youtubeのビジネスとしてのポテンシャルを感じさせる2つの出来事が相次いで起こりました。まず、Youtubeが昨年の秋から始めていたテレビ番組などの配信を大幅に拡充するという動き。Cnet Japanの記事によると、Youtubeは新たにSony PicturesやLionsgate,MGM…

新聞業界が目指すべきウェブ・サービス

New York Timesのウェブサイトで、偶然面白い図表を見つけました。"The Ebb and Flow of Movies: Box Office Receipts 1986 ― 2008"と名付けられたものです。直訳すると「映画の満ち干き」。名前の通り、映画の興行収入を潮の干満になぞらえてグラフ化したも…

米国のケーブルテレビ業界が思い描くネット配信の姿-2

ここ1週間ほどの間に、New York Times("Some Online Shows Could Go Subscription-Only")とLos Angeles Times("Internet's role in cable TV debated")が相次いでケーブルテレビ業界の動画ネット配信についての記事を掲載したのをみて、この話題がアメリカ…

米国のケーブルテレビ業界が思い描くネット配信の姿

最近のエントリーで紹介したとおり(こちらとこちら)、HuluとBoxeeのいざこざに見られるようにアメリカの主流メディア、特にケーブルテレビ業界はネット配信されるコンテンツがテレビ画面で視聴できるようになることに強い警戒心を抱いています。有料のサブ…

経済危機と動画のネット配信ビジネス

Economistに、現在の経済危機がネット上のフリー・エコノミーに与える影響を分析する記事(The end of the free lunch―again)が出ていました。多少自分なりの解釈も込めて訳すと、大まかに次のようなことが書かれています。「現在の経済危機により、ウェブ上…

ネット配信とケーブルテレビ

日本では、広告収入の急減に見舞われている民放の厳しい状況と比較したJ-COMの好調さ*1がしばしば語られています。でも、アメリカでは少し事情が違います。地上波のテレビネットワークに向けられる広告費はアメリカでも減っていますが、最近は「ケーブルや衛…

「U2 3D」に見る3D映画の可能性

遅まきながら、日本でもこの週末からようやく映画「U2 3D」の上映が始まりました。この映画は、その名の通りロックバンドU2のライヴを3Dで映画化したものです。私見ですが、作りの丁寧さや3D映像の効果的な使い方といった点で、今の3D映画の最高峰をゆく作品…

ウェブ上でこんな「目利き」のサービスが欲しい

前回のエントリーではオンラインビデオの目利きサイト誕生という話題を取り上げましたが、この「オンラインビデオの目利き」について、前からこんなことができたら良いのになと考えていることがあります。エンターテインメント系のコンテンツではなく、より…

報道系コンテンツとグローバルなネット配信

前回のエントリーでは、CBSの看板報道番組「60 Minutes」がウェブ上で日本からも見られることを紹介しましたが、テレビ局が放送する番組でも、こうした報道系のコンテンツは地理的なアクセス制限をかけずにネット配信されることがしばしばあります。例えば、…

「融合」時代のテレビ・ビジネス(後編)

前編では、デジタル化による「融合」が進む中でテレビ・ビジネスを取り囲む環境が大きく変わってきているということを書きました。一方ではテレビ番組をパソコンや携帯、ゲーム機など他のプラットフォームに展開していこうという動きがあり、他方ではテレビ…

「融合」時代のテレビ・ビジネス(前編)

昨年の秋にデジタル化がもたらす「融合」(Digital Convergence)への対応をゲーム業界の立場から分析したエントリーを2本書きました(1、2)。その時に本当はもう1本、融合時代のテレビのあり方についても書きたかったのですが、だらだらしているうちに数…

CES,ネット対応テレビと「イノベーションのジレンマ」

いろいろな報道で取り上げられている通り、今月ラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show (CES)では家電メーカー各社がこぞって「ネット対応テレビ」を売り物にしていました(例えばWSJの記事)。アメリカでもテレビとネットの距離を縮める取り組み…

子ども用コンテンツのネット配信

動画のネット配信を行う際にコンテンツの品質が重要なのは言うまでもありません。それは通常「プロが制作したものかユーザー作成コンテンツか」や「トップクラスのコンテンツを確保できるか1.5〜2級の作品に留まってしまうか」といった軸で語られることが多…

ネット配信のキーワードは「OPQR」

この1年もオンライン・ビデオの世界にはいろいろなことが起きました。このブログではアメリカとイギリスの状況を中心にそんな動きを紹介してきましたが、その中で映像のネット配信をビジネスとして成立させるために必要な要素としていくつかのキーワードが…

BBCがデジタル時代に描くビジョン-1

インターネットや携帯の急速な普及などによって激しく変化しているメディア環境の中でテレビや新聞といった伝統的なマスメディアが生き残っていくためには、会社のトップの役割が極めて重要になります。彼らが描く自社の将来像と、そのビジョンの実現に向け…

Kangarooに目指してほしいビジネスモデル

昨日書いたように、BBCから鳴り物入りで移籍してきたCEOのAshley Highfieldが半年も経たないうちに退任してしまったイギリスのオンライン映像配信プラットフォームKangaroo(現在立ち上げ準備中)ですが、先月HighfieldがフランスのMIPCOMに出席した際に(当…

人材の流動性から見るオールド・メディアのネット配信

つい先日のPaid Content UKに、Ashley HighfieldがProject Kangaroo*1からマイクロソフトに移籍するという記事が出ていました。え?Highfieldの今の役職は、Project KangarooのCEOです。しかも、今年の夏に就任したばかり。その前は、BBCのデジタル戦略を統…

金融危機とコンテンツのネット配信ビジネス-2

前回のエントリーでは世界的な景気低迷が映像コンテンツの無料ネット配信ビジネスに与える影響について書きましたが、経済の悪化とオンライン・ビデオのビジネスの関係を考える上ではもう一つ別の視点があります。それは、「無料配信と有料配信の力関係はど…

金融危機とコンテンツのネット配信ビジネス-1

僕は英米のニュースメディアやブログなどを主な情報源にして映像のネット配信の発展をウォッチしているのですが、リーマン・ブラザーズの破たんをきっかけに金融危機や株安・ドル安などが一気に広まる中、アメリカではオンライン・ビジネスの今後の見通しに…

Joostのリニューアル

Joostがリニューアルしたというニュース(IT PROの記事など)を見て、久しぶりにJoostのサイトを訪れてみました。Flashベースのサービスに移行したことにより、ユーザーは専用のプレイヤーをインストールすることなくブラウザ上で直接動画を視聴できるように…

ゲーム会社の戦略に見る「融合」の第3フェーズ

昨日のエントリーでは任天堂の「融合」戦略について書きましたが、日経ビジネスのサイトに今日アップされていたソニー・コンピュータエンターテインメント(SCE)の平井社長のインタビューではSCEが考える「融合」戦略のことが語られていました。一部、引用しま…

DSに見る任天堂の「融合」戦略

Venture Beatというサイトに、アメリカ任天堂の社長を務めるReggie Fils-Aimeのインタビューが出ていました。その中の一節がとても印象に残ったので紹介します。DSiへの機能追加について、任天堂はAppleの後を追っているのかという質問をされた後の答えです。…

緩くて厳しいMusic Rights

コンテンツ配信のことを考えるときに、その位置づけをどのように理解すればよいのかがよくわからない権利がひとつあります。音楽の権利(Music Rights)です。これは配信に関する制約が緩いようでいて、でも時には手ごわい「抵抗勢力」となるのです。そんな不…

ネット配信が崩し始めたウィンドウ戦略

よく知られているように、映画・テレビ業界は、作品のリリースの時期と値段をメディアや地域ごとにずらしてトータルの収益を最大化しようとするウィンドウ戦略を取っています。アメリカでは、 映画: 劇場公開→DVD→有料ケーブル・チャンネルや機内上映→地…

デジタル時代のコンテンツ配信は「呼び寄せ」型から「追いかけ」型へ

前回のエントリーでは、Huluのポジショニング戦略を紹介しました。テレビ番組や映画などのプレミアム映像コンテンツを扱うオンライン配信事業者は、新しいテクノロジーを権利ビジネスという旧来の仕組みと上手に結びつけられるかどうかが成否を分ける要因と…

Hulu成功のポイントは「近過ぎず、遠過ぎず」

今年3月に本格的なサービスを開始したHuluは、それから半年もしないうちに月間のストリーム提供数が1億回を越えるなど、これまでのところ非常に順調な成長を続けています。英米や日本でプレミアム動画*1の無料オンライン配信を手がける他の会社と比較すると…

「イノベーションのジレンマ」をもとに地上波TVとインターネットTVを考える-2

それでは、テレビ番組の各種オンライン配信(合法的・非合法的なものをともに含む)について、それぞれが持続的技術と破壊的技術の観点からどのあたりに位置づけられるのかを考えて見ましょう。大まかに、次のようなグラフが描けるかと思います。破壊的技術 ↑…

「イノベーションのジレンマ」をもとに地上波TVとインターネットTVを考える-1

遅まきながら、「イノベーションのジレンマ」という本を読みました。著者のクレイトン・クリステンセンはハーバード大ビジネススクールの教授で、10年ほど前に出版されたこの本で一躍有名になった人です。読んでいるうちに、この考え方をもとにして地上波…

「融合」について思うこと

留学を終えて帰国してから、日本で耳にする「放送と通信の融合」という言葉に違和感を感じるようになりました。日本では、融合についての話になるとテレビ局と通信会社の間の主導権争いといった構図で語られることが多い気がしますが、融合というのはもっと…

オンラインVODのコンテンツ集積・配信モデル

ここしばらく大学の課題でとても忙しい日々が続いたため、すっかり更新が滞ってしまいました。ようやくそちらが一段落したので、またエントリーを再開していきたいと思います。アメリカの4大ネットワーク(ABC,CBS,NBC,FOX)はいずれも番組…