「融合」時代のテレビ・ビジネス(前編)

昨年の秋にデジタル化がもたらす「融合」(Digital Convergence)への対応をゲーム業界の立場から分析したエントリーを2本書きました()。その時に本当はもう1本、融合時代のテレビのあり方についても書きたかったのですが、だらだらしているうちに数か月経ってしまいました。ずい分と間があいてしまいましたが、そのテーマについて考えてみたいと思います。長いので2回に分けて書きます。

以前のエントリーで、「融合」とはコンテンツとメディアが1対1の結びつきから解放され、ひとつのコンテンツがさまざまなプラットフォームで利用でき、同時にひとつのプラットフォームがさまざまな種類のコンテンツを扱うようになることであり、この重層的な結びつきを推進する上で大きな役割を果たすのがネットであると書きました。映画はもはや劇場やテレビだけで楽しむものではなくパソコンでも携帯でもゲーム機でも見ることができますし、ゲーム機はゲームをするだけでなくネットにつないで動画や天気予報を見たり、撮った写真を整理したりするためにも使うことができるという意味です。

そんな状況の中、「テレビ番組」を取り囲む状況も大きく変わっています。一方では、いかにしてパソコンや携帯、ゲーム機などにテレビ番組を展開していくかという話があり、他方では、テレビの受像機はテレビ番組だけを扱うものではなくなりつつあるからです。

前者について言えば、BBCのiPlayerやHuluなどに代表されるように、テレビ番組のネット配信が各国で進みつつあります。BBCの番組はiPhone任天堂Wiiなどでも視聴できます。日本でも、ワンセグを通じて携帯でテレビを見ることができますし、DSやPSPワンセグを受信するためのアンテナも販売されています。国や地域によって差があるとはいえ、テレビ番組をテレビ以外のプラットフォームに展開する取り組みは着々と進みつつあると言えるでしょう。

一方、後者に関しては、テレビゲームが既に「テレビを利用するエンターテインメント」として確固たる地位を築いているのに加え、先日のCESで主要家電メーカーがこぞってテレビのネット対応化を打ち出したように(関連エントリー)、テレビの使い方がこれからはますます多様化していきそうです。

これら2方面の変化がテレビ番組(およびそれをビジネスとして制作・放送・配信するメディア企業)に及ぼすインパクトとしてひとつ言えるのは、どちらをとっても「融合」はテレビ番組の「One of Them化」を促すということです。後編では、その具体的な事例を見ていくことにします。