考察

大学が育てるウェブ上での学びの担い手

MITのOpen CourseWareからOpen UniversityやUniversity of the People、そしてKahn Academyなどに至るまで、ウェブ上での学びを促進する取り組みが多彩に広がりつつあります。例えば、Marc And Angel Hack Lifeというブログには、1年ほど前のエントリですが…

ネットと「縦方向」のつながり・再考

先月行われたTEDxTokyoに、運営スタッフの一員として参加しました。概要や当日の模様はGreenzやJapan Timesの記事(英語)でも紹介されていますが、スタッフとして参加しても非常に刺激的なイベントでした。1年ほど前にこのブログのエントリ(こちら)で「S…

「コンテンツ」と「ディストリビューション」再考

このブログを始めて3年が経ちました。最初のエントリで書いたコンテンツとディストリビューションの関係を、今のタイミングでもう一度考え直してみたいなと、しばらく考えつつそのままにしていたのですが、この機会に取り上げてみたいと思います。「Content…

TED Booksを読んで感じたこと

前回紹介したTEDの電子書籍TED Books、購入した1冊を読み終わりました。読みながらこのTED Booksという取り組みについて感じたことを簡単に記します。まず、クリス・アンダーソンがTED Booksの特長であるとした「短さ」ですが、これは確かに斬新で、普通の…

ライヴストリーミングの広がりが持つインパクト

アーティストによる先進的なUstreamの利用が広がりつつあります。先月行われた宇多田ヒカルの公演のUstreamによる無料配信は大きな話題になりましたが、海外100の国・地域を含む34万5千のユニークユーザー、最大で10万以上の同時アクセス、計104万のページ・…

「I」と「You」と「We」のメディア

メディア系の製品やサービスでは、この5〜10年ほどの間に「I」や「You」といった名前を冠したものが大きな勢力を持つようになっています。製品やサービスの名前には、それに込められた思いやコンセプトが色濃く反映するものです。こうした「人称代名詞」とネ…

「Open Learning」と「Open Education」

直近の2回のエントリ(こちらとこちら)で、学びの場としてのネットについて取り上げましたが、その過程で気になり始めたことがあります。それは、「Open Learning」と「Open Education」という言葉についてです。これは、ネット上で学習の機会やリソースに…

ネット上での「学び」について-2

前回に続いて、ネット上での学び・高等教育について考えてみることにしました。University of the PeopleやTEDのような"新興勢力"だけでなく、昔からある伝統的な教育機関の中にも、ネットを利用しながら公共性の高い学びのプログラムを提供しているところが…

ネット上での「学び」について

ビル・ゲイツがカリフォルニアのTechonomyという会議で語った「ここ5年以内に、最高の教育リソースは無料でウェブ上に現れてくることになるでしょう」という言葉がちょっとした話題になっているようです。ゲイツの発言の要旨はTechCrunch Japanの記事(こち…

「The Times」紙のウェブサイト有料化に思うこと

前回はアメリカのHuluのことを取り上げましたが、イギリスでは新聞「The Times」がウェブサイトでの記事閲覧を有料化して2週間程度となりました。Paid Content UKの記事(こちら)によると*1、無料お試し期間に登録した人が15万人いて実際にお金を払う登録…

iPadとリアル世界のコミュニケーション

日本でもiPadの予約が開始されました。個人的にはすぐに購入するかしばらく様子を見るかまだ考えていたところなのですが、ボストン在住のジャーナリスト・菅谷明子さんのブログに書かれていたiPad体験記を読んで、ぐっと心が動かされました。Harvard Square …

ネットと「縦方向」のつながり

先日、徳島県にある神山町のNPOグリーン・バレーのウェブサイト「イン神山」に載っていた「神山写真帖」(こちら)というページを見ました。町の人々が撮った神山の写真にタグをつけて整理し、簡単なキャプションとともに公開しているサイトです。古いもので…

iPadと話し言葉の音声コンテンツ

いよいよアメリカではiPadが発売されます。どんな感想や反響を呼ぶのか気になりますが、すごく地味なところで個人的に関心を持っていることがあります。iPadの登場により、iTunesやiPod,iPhoneなどがこれまで育ててきた「話し言葉の音声コンテンツ」とでも言…

ジオメディアの娯楽性とそのインパクト

ジオメディアに対する注目は主にマーケティング・ツールとしての可能性と娯楽性の高さという2つの側面から来ているのではないか、という話の2回目です。前回はマーケティングのことを取り上げたので、今日はジオメディアが持つ娯楽性とその影響について考…

マーケティング・ツールとしてのジオメディア

前回もFourSquareなど位置情報系サービスのことを書きましたが、こうしたジオメディアに対する注目が最近高まってきているのは、それがマーケティング・ツールとしての可能性と娯楽性の高さを兼ね備えていることに大きな理由があるという気がします。人の集…

ジオメディアとリアル社会でのつながり

最近、位置情報を利用したジオメディアと呼ばれるサービスが大きな注目を集めています(はてなブックマークニュースの記事などを参照)。アメリカではFourSquareというサービスが人気を集めてきましたが*1、最近は競争が激しくなってきています。最近のNew Y…

コンテンツとコミュニティ 2 〜ストーリーの役割

2か月ほど前に「コンテンツとコミュニティ」というエントリを書いてから(こちら)、この両者の関係が気になっていたのですが、最近読んだ須田和博さんの『使ってもらえる広告〜「見てもらえない時代」の効くコミュニケーション』という本で気になるひと言…

iPadとComcast

AppleがiPadを発表しました。この製品に対する期待や不満などが各所で述べられていますが、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)のブログには「iPadを警戒しなければならないのはAmazonではなくてComcastだ」という分析が載っていました。動画のネット配信と…

コンテンツとコミュニティ

年末年始に気になった記事とスライドを1件ずつ紹介します。まずはNew York Times 12/27付けの"Adding Fees and Fences on Media Sites"という記事です。2009年を振り返ってネット上のニュース記事や雑誌、書籍、動画などを有料化しようとする大手メディアの…

「非ネット」と「ネット」をバンドリングする動画配信ビジネスの新潮流

GEからNBCユニバーサルをの経営権を取得することで最近大きな話題を呼んだアメリカ最大のケーブルテレビ運営会社(MSO) Comcastですが、今度は「TV Everywhere」計画を全米で本格的に展開するという発表を行いました。New York Times(12/16付 "Comcast Introd…

電子ブックリーダーの今後に期待したいこと

AmazonによるKindleの世界展開、Nook (Barns&Noble)の発売開始、ハーストによる「Skiff」計画の発表(AFPの記事などを参照)、さらにはAppleが来春にもタブレットPCを出すという噂など、電子ブックリーダーを取り巻く環境がこのところにわかに沸騰してきた感…

「深さ」と「スピード」

「アテンション・エコノミー」という言葉もあるように、流通する情報の量が飛躍的に増すにつれて人々の関心が希少な「資源」になってきているということをこの数年よく耳にします。そんなに目新しい話ではないのですが、最近読んだThe Globe and Mailの記事…

アナログとデジタルの狭間で

昨日のエントリで取り上げたBusiness Weekの話は、デジタル時代にメディア企業が抱える課題の大きさを示しています。繰り返しになりますが、「ネットを上手に取り入れないメディアは競争に取り残されるけれど、ネットを上手く活用したからと言って必ずしも成…

「公共新聞」の可能性

先日の日経新聞に、アメリカ議会などで検討が始まっている新聞社への支援策についての記事が出ていました(6/9付け「米新聞社に救済論浮上」)*1。このあたりの議論にはあまり詳しくないのですが、経営支援に向けた検討課題として、税制優遇策の導入に加えて非…

Susan Boyleの動画とネット配信の収益化

スコットランドの"おばちゃん歌姫"Susan Boyleの動画が大きな話題を呼んでからひと月半が経ちます。テレビ番組が持つコンテンツとしてのパワーとYoutubeの配信プラットフォームとしての強力な伝播力が組み合わさった事例だと以前のエントリーで書きましたが…

追悼の場として、「オンライン資産」管理の場としてのネットの可能性

先日、「亡くなった忌野清志郎さんを悼むファンの声がYoutube上の彼のクリップに続々と寄せられている」という話を書いてから(こちら)、人の死に対する哀悼の気持ちを表し、交換し、慰めを得る場としてのネットの可能性というものを少し考えるようになりま…

「どローカルなジャーナリズム+ネット」は新聞の武器になる-2

最近取り上げた南カリフォルニアの山火事はほとんど沈静化したようですが、山火事による避難指示エリアや道路封鎖、避難所の場所などを刻々と更新し続けたLA TimesによるGoogle Mapsの地図には、いくつもの感謝のコメントが寄せられています。 一部を引用し…

ネット配信と「国際化のパラドックス」

New York Timesの記事にちょっと気になることが書かれていました。"In Developing Countries, Web Grows Without Profit"という4/26付けの記事です。「FacebookやYoutubeなどはさまざまな国のユーザーに使われることによって世界的なブランドになった。でも…

「どローカルなジャーナリズム+ネット」は新聞の武器になる

「新聞は、伝統的な強みである取材力や記事の蓄積とウェブ上にふさわしい情報の"見せ方"を組み合わせることで良質なネット・コンテンツを生み出すことができるはずだ」というエントリーを以前に書きました(こちらを参照)。ここに「どローカルな視点」が加…

Disney-Hulu連合のインパクト

DisneyがHuluに参加することになったというニュース(昨日のエントリーを参照)はアメリカのメディア業界でも大きな話題になっていて、この件についての意見や分析がいろいろな記事やブログに載っています。それらを参考に、DisneyとHuluが手を結んだことが…