オンラインVODのコンテンツ集積・配信モデル

ここしばらく大学の課題でとても忙しい日々が続いたため、すっかり更新が滞ってしまいました。ようやくそちらが一段落したので、またエントリーを再開していきたいと思います。

アメリカの4大ネットワーク(ABC,CBS,NBC,FOX)はいずれも番組のオンライン配信を行っています。広告つきの番組を無料で提供するという点では4社とも一致しているのですが、コンテンツの集積(Aggregation)と配信(Distribution)戦略は大きく異なっています。NBCとFOXは、自社ウェブサイトで自らの番組を提供しているほか、これまでに何度か紹介してきたHuluの親会社でもあります。そこで、ABC,CBS,Huluのモデルを比較してみたいと思います。


まず、ABCのオンラインVOCは「自己完結」型と言えます。自社のテレビチャンネルで流した番組をオンラインに載せ、それを自社のウェブサイトと一部のO&O(自営局)およびアフィリエイト(加盟局)のウェブサイトを通じて配信するというのが基本モデルです。昨年秋にAOLと配信契約を結ぶまでは、外部起業を経由したオンライン配信は全くな行われていませんでした。また、提供している番組も基本的には今シーズンにテレビ放送されている最新作のみです。

次に、CBSは「半オープン」型のモデルを採用しています。自社のテレビ番組しか提供していないのはABCと同じですが、ひと月ほど前からは今シーズンの番組に加えて昔の名作(「冒険野郎マクガイバー」「メルローズ・プレース」など)も5作程度提供するようになりました。一方、番組の配信については積極的に外部企業と連携しており、O&Oやアフィリエイト局に加えてAOL,MSN,Comcastなどおよそ20の会社・グループとCBS Audience Networkというウェブ上の配信ネットワークを形成しています。

そしてHuluは「オープン」型です。Hulu自体はテレビ・チャンネルなどを持たないオンライン専業の会社で、ウェブ上でコンテンツのAggregation、Distributionのプラットフォームとなることを目指しています。このため、コンテンツの集積・配信ともに多くのパートナーと提携しています。さらに、Huluはプロが制作した動画コンテンツを検索するプラットフォームとなることも目指しており、Huluのサイトにある検索エンジンは、Huluに番組を供給していないABCやCBSの番組の在り処を探し当てることも出来ます(もちろん対象は合法的に提供されているコンテンツだけですが、ABCやCBSのサイトにある動画視聴ページとリンクを貼ることで、ユーザーがHuluのページからそれらの番組にたどり着くことが出来るようにしています)。

このように、三者三様のオンラインVOD戦略が取られていますが、インターネットの特長を活かすためには、少なくとも配信に関しては可能な限り多くのルートを使ったほうが良いのではないか、と個人的には感じます。もちろん権利の問題があるので提供できる番組の数やエピソード数や期間に限りが出るのは仕方ありません。ただ、自社サイトで提供できる番組であれば、それを囲い込むのではなく、ユーザーがウェブ上のいろんな場所で視聴できるようにすべきではないかと思うのです。特に、あらかじめ広告が番組内に埋め込まれていることを考えると、番組の視聴回数の増加イコールCMの視聴回数の増加ということになります。つまり、より多くの人に番組を見てもらう→広告のリーチが増える→広告収入の増大につながる、という流れが期待できるのです。Huluでは外部(=自社サイトではないところ)からHuluのコンテンツを視聴するケースが過半を占めているそうです。自社サイト外でのコンテンツ視聴に関してはAOLやMSNなどの配信パートナーと広告収入の一部を分け合うことになってしまいますが、それによって自社サイトまでは来てくれないユーザーを取り込むことができるのであれば、最終的にはその方がネットワーク局の利益にもつながるのではないでしょうか。