オンラインVODはどれほど視聴されているのか

アメリカのTVネットワークが次々にウェブ上の無料番組配信を開始していく一方で、実際にこれらの取り組みがどれほどの成功を収めているのかというデータはあまり一般には公表されてきませんでした。でも、今日のロイターに出ていた記事にそんな関連の情報が載っていました。

それによると、Huluは3月に本格運用が開始されてからのひと月で、ほかのアメリカのTVネットワークが運用しているウェブサイトを上回る利用者を集めるほどの人気だったということです。元データはNielsenによる調査で、

○4月にHuluのビデオは計6320万回視聴され(Hulu自体で見られたものと、AOLやComcastなどHuluの配信パートナーのサイトで見られたものをともに含む)、視聴者は平均でひと月129分をHuluのビデオに費やした。
○一方、それまでもっとも人気を集めていたネットワーク局のVODサイトであるABC.comの4月の実績はビデオの視聴が6080万回でユーザーのひと月の平均使用時間は57分だった。

という結果が出ています。

視聴回数の違いはそれほど多くありませんが、Huluの利用者は月間でABC.comの2倍の時間をコンテンツのオンライン視聴に費やしているというのは興味深い数字です。途中で視聴を辞めてしまう人の数や、視聴するコンテンツの種類(ドラマやコメディのエピソードを丸ごと見るのか、あるいはエピソードを2分程度に抜粋したものや出演者のインタビューなどのショートクリップを見るのか)といった点が利用時間の違いに影響しているのでしょうか。Huluは映画も100タイトルほど無料で提供しているので、そのあたりも利用時間を伸ばす要因になっているのかもしれません。

それにしても、ひと月に6000万回ビデオが視聴されるというのはものすごい数です。1日平均でおよそ200万回です。以前のエントリーで紹介しましたが、昨年12月にBBCのiPlayerが本格運用を始めた際は、トラフィックが14倍に増えて最初の2週間で350万回のダウンロード/ストリーミングがあったとされています。ペースが同じだったとすればひと月でおよそ700万回程度という換算です。Huluはその9倍もの利用があったということになります。イギリスとアメリカの人口差などを考えても、Huluはかなりの利用者を集めることができたと言えるのではないでしょうか。

でも、上には上がいるものです。冒頭に上げたロイターの記事によるとYoutubeの4月の実績はビデオの再生が40億回、ユーザーの利用時間は月に90分ということですから、HuluやABCと比べても桁が2つ違います。それだけのユーザーを集めていてもYoutubeはなかなかお金にならないというのが不思議でもありますが、そこにオンラインでのコンテンツ配信ビジネスの難しさがあるのでしょう。では、広告を番組内に埋め込むというHuluやABCを含めたアメリカのネットワークTVによるオンラインVODがビジネスとして成功する見込みはどれほどあるのでしょうか。次回はそんなことを考えてみたいと思います。