ゲーム会社の戦略に見る「融合」の第3フェーズ

昨日のエントリーでは任天堂の「融合」戦略について書きましたが、日経ビジネスのサイトに今日アップされていたソニー・コンピュータエンターテインメント(SCE)の平井社長のインタビューではSCEが考える「融合」戦略のことが語られていました。一部、引用します。

 一義的には、ゲームからプレイステーションの世界に入ってもらって、「ほかにもいろいろ楽しいものがあるんだ」とユーザーに思ってもらいたい。もちろん、ゲーム以外の入り口があってもいい。PS3は、ブルーレイ・ディスクの映画の再生装置でもあり、インターネットにつながる情報端末でもある。テレビにつないで映画でも音楽でも情報でも楽しめるコンソールとして購入してくれる人も大歓迎だ。
 基本的にはユーザーのみなさんが、仕事や学校の後に「何かで遊びたい」と思ってまずスイッチを入れる箱にしたい。朝起きたら電源が入っているという形でもいい。忙しい出勤前の時間に、PS3でお天気や交通などの情報をとる。プレイステーションを生活の一部にしたい。

ゲームはもちろん、ネットや映画、音楽、天気予報や交通情報に至るまで、家庭でさまざまな種別のコンテンツ(エンターテインメントや情報)にアクセスするためのデバイスとしてPS3が位置づけられていることがわかります。また、同じ記事で「ゲーム機に取り付けるカメラを使ってテレビ画面に映る自分自身を操作して遊べるゲーム」や「本物のミュージシャンが歌う映像と一緒に流れる字幕に合わせて、カラオケを歌うゲーム」が欧米でヒットした例が挙げられているように、SCE任天堂と同様に「ゲーム以外のコンテンツとゲームの統合」(ひとつのプラットフォーム上での異種コンテンツの統合)について強い関心を持っていることが伺えます。

音楽や写真といった異種コンテンツがゲームに取り入れられると、「音楽を聴く」「写真を撮る」「写真を見る」といった携帯やiPod上の行動よりもインタラクティブ性がもう1段階高くなります。ユーザーは曲に合わせて歌ったり、カメラを操作してゲーム内のプレイヤーを操作したり、撮った写真をゲーム内で使ったりすることを通じて、それらの異種コンテンツを介しながらゲームに参加することになるからです。この意味で、任天堂ソニーといったソフトとハードをともに押さえるゲーム会社が進める「融合」は、携帯の多機能化や音楽プレイヤーから始まってデジタル写真のアルバムや動画プレイヤーにも成長したiPlayerなどに見られる「融合」に、さらにプラスαの要素が加わっているのではないかと感じられます。後者の特徴が「プラットフォームのマルチコンテンツ対応化」と「コンテンツのトランス・プラットフォーム化」という“融合の2つの特徴”(関連エントリー)で言い表せるのに対して、任天堂ソニーによる「融合」は、その2つに加えて「ひとつのプラットフォーム上での異種コンテンツの統合」という側面も持ち合わせているからです。ゲームというコンテンツをベースにしているからこそできることなのでしょうが、これは、デジタル技術がメディア・コンテンツビジネスの世界にもたらす「融合」の3つめの段階と言えるのかもしれません。