絵本とネット配信-2

先日のエントリで「絵本をデジタル化して画像に簡単な動きや演出をつけ、読み聞かせの音声とともにひとつの作品としてネット配信できたら面白いのではないか」ということを書きました(こちら)。そして最近、アメリカではネット配信でこそありませんが実際に絵本を簡単な動画にした「動く絵本」が商品化されていることを知りました。

たとえば、Amazon.com上にある「Scholastic Treasury of 100 Storybook Classics (Scholastic Video Collection)」というDVDセットの紹介ページをご覧ください(こちら)。「Curious George Rides a Bike (「おさるのジョージ」シリーズの絵本)」や「Where the Wild Things Are(邦題:かいじゅうたちのいるところ)」、「Harry the Dirty Dog (邦題:どろんこハリー)」などを始めとした100の物語が映像としてDVDに収められています。

別にこの商品を薦めるとかそういうつもりはありませんが、これを例に挙げたのは、上記Amazon.comのページでこのDVDに含まれている物語のうち2作(「Where the Wild Things Are」と「Chika Chika Boom Boom」)の一部を「試写」できるからです。*1。日本からでも視聴することができます。見れるのは1〜2分程度と限られた尺ではありますが、これがすごく良い出来なのです。

良いなと感じたポイントは3つあります。まず、多くの人々に長い間親しまれている有名な絵本をラインナップに入れていること*2。次に、原作のイラストを忠実に守りながら動画化していること。最後に、動画化をやり過ぎていないこと、つまり、映像化されたDVD作品とはいえ「絵本」というスタイルの雰囲気をきちんと残していることです。

「動く絵本」というコンセプトだけが先行すると、権利処理などの関係から誰も知らないような物語、あるいは新しくそれ用に作られた物語が採用されたり、あるいは有名な昔話をベースにしながらもイラストの雰囲気がイマイチだったりということにもなり得ます。これまでにそういうケースを見て残念に感じたこともあるので、上に挙げたような点をきちんと押さえた上での絵本の映像化はすごく良い仕事だなと思います。また、こうした映像作品であれば親や祖父母の世代にも受け入れられやすいのではないだろうかという気もします。

ちなみに「Where the Wild Things Are(邦題:かいじゅうたちのいるところ)」といえば、長年かけて制作されたスパイク・ジョーンズによる実写版の映画が完成し、日本でも来年1月に公開される予定になっています(公式サイトはこちら)。今回紹介した「動く絵本」版とは予算規模も対象とする客層の広がりも大きく違うでしょうから、全く別種の作品ととらえるべきなのかもしれません。でも、あくまで個人的な感想ですが、ずっと絵本でこの物語に親しんできた身からすると、「動く絵本」版の作品は、実写版と同じぐらいか、もしくはそれ以上「見たい」という気にさせられるのです。

ただ、アメリカで発売されているこの作品のDVDは、リージョンコードの違いにより一般の日本の再生機では見ることができません。日本版も発売されていないようです。最後にネット配信の話に戻りますが、こうした地理的な制約や言語的な障壁をあまり負担をかけずに乗り越えるために、やはり動画コンテンツに複数言語の字幕の切り替え機能を付けてネットで世界に向けて販売するというやり方がもっと広まってくれると良いのになと思います。

*1:こうした動画トレイラーは日本のAmazonでもマイケル・ジャクソンの「This Is It」など(こちら)で使われるようになってきましたが、映像作品のプロモーションにはとても効果的だと思います。

*2:100作品全部がそうなのかどうかはわかりませんが。