ネットならではの報道コンテンツとは-1

ニュースを扱うウェブサイトの成否は、取材力に加えて記事(アーカイブ的なものを含む)の見せ方にも大きくかかっていると僕は思っています。その観点から、新聞社のサイトはSNS機能や動画ニュースの配信に力を入れ過ぎるよりは自らの強みをより発揮できるような方法で「報道コンテンツ」*1を発信していくべきではないかと以前のエントリーに書きました(こちらこちら)。全く同じことが、報道機関としてのテレビ局のウェブサイトにも言えます。

今では各国の多くのテレビ局が自社サイトで動画ニュースを流しています。テレビ局は元々動画を作って発信するのが本業ですから、ニュース番組用に作られた動画を項目分けしてネット配信するのは当然な流れだというのは確かです。でも、動画ニュースと文字ニュースを流すだけでいいのか、ネット上ではそれ以外のプレゼンテーションが最善の方法となるケースはないのかという点は常に考える必要があるように思います。

もちろん、動画が圧倒的な強みを発揮する分野も多くあります。たとえば、もの凄い勢いで事態が動いている大災害や事故、社会全体の大きな関心を集めている事象を伝えるような場合。具体的には、アメリカの同時多発テロの模様やインド洋の大津波オバマの就任演説、また五輪やサッカーなどスポーツの決定的瞬間などは、テレビであれオンラインであれ、やはり動画で見るのが一番インパクトがあります。でも一方で、報道で過去の出来事を振り返ったり、長いスパン(数週間、数か月など)をかけて動いている事柄を俯瞰して伝えるためには、必ずしも動画だけで伝えるのが一番わかりやすいとは限りません。

特にネット上では、「文字+図・写真」で表現する紙媒体の新聞や「音+動画」で伝えるテレビと比べてプレゼンテーションの自由度がずっと高まります。だから、新聞社もテレビ局も、自らがこれまで築き上げてきた表現の作法と枠を超えたところでどのような報道コンテンツの見せ方をするのかを考えなければならなくなります。自由度が高い分、見せ方のセンスが問われるのです。

以前はネットの特性を上手く使った新聞社の報道の例としてNew York Times)とLos Angeles Times()のケースを取り上げましたが、今度はテレビ局の事例を紹介します。でも、説明がずいぶんと長くなってしまったので、今回はここまで。次回、BBCの取り組みを見ていくことにします。

*1:ここでは、表現の自由や中立性といったジャーナリズムの規範に基づいて調査・取材・分析された結果を読者や視聴者に伝えるために形にしたものという意味で「報道コンテンツ」という言葉を使っています。文字や動画のストレート・ニュースも含まれますし、より企画性の強いものも含みます。