放送大学が一部講義をネット公開へ

9/29付け日経新聞の片隅に、「放送大学が授業の一部をネットで無料配信する」という小さな記事がありました(ネット上ではスポーツ報知の記事が載っていました)。先日のエントリ(こちら)で放送大学とイギリスのOpen Universityを比較し、放送大学ももっとネットを活用してほしいと書いたところだったので、これは嬉しい発表です。

放送大学の告知ページは(こちら)です。今回の取り組みは、MITに始まったOpen Coursewareの流れを組み、「放送大学オープンコースウェア」という名称がついています。公開は10月1日から。最初に配信されるのはテレビ授業科目4科目、ラジオ授業科目8科目、特別講義5番組とのことです。ぱっと見た感じでは、テレビでは「空間とベクトル」「コンピュータのしくみ」といった数学・工学系、ラジオでは「環境と社会」「教育心理学概論」といった人文・社会科学系の講義が多くなっています*1

東大や慶応などがiTunes Uで一部講義を配信するという少し前の発表と比べると、残念ながら今回の放送大学の取り組みは、かなり注目度が低いように見受けられます。でも、元々の講義が講堂や大教室ではなく、テレビやラジオといった「リアルな場を共有しない人たち」に向けて作られたものですから、講義の長さも演出も、ネットでの独習により向いているものが多いのではないかという気がします。また、当初公開される講義数は決して多くはありませんが、上記スポーツ報知の記事には「今後は5〜6年で、配信科目・講義を50ぐらいまで増やす予定」と書かれていますから、そういう面でも今後の発展が期待されます。

先日、梅田望夫さんと飯吉透さんの『ウェブで学ぶ−オープンエデュケーションと知の革命』を読んだ簡単な感想を記しましたが(こちら)、学びや教育のオープン化という潮流は、非常にワクワクするものであると同時に、それを最先端のところでフルに活用するためには、ほとんどの場合かなり高いレベルの英語力が求められるものだなとも感じていました。でも、iTunes Uや放送大学の例に見られるように、少しずつではありますが日本語でもネットを通じた学びの環境が整備されつつあります。こうした動きはどんどん前へ進んでいって欲しいと思いますが、それは一方で、各種の学びの機会をどう活用するか(あるいはしないのか)がユーザー側にも投げかけられるようになってくるということでもあります。オープンな学びの環境は、その中での自らの立ち位置やアプローチを考えることの重要性と対をなして広まっていくのかもしれません。

*1:学位取得につなげるには放送大学への入学が必要、とのことです。