『ウェブで学ぶ』を読んで

梅田望夫・飯吉透著『ウェブで学ぶ−オープンエデュケーションと知の革命』を読みました。そこで紹介されている、「知と情報」をウェブ上で広く公開するための取り組みの数々に、止まらぬ高揚感を覚えました。

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)
ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)梅田望夫 飯吉透

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飯吉さんによると、「オープンエデュケーション」には3つの構成要素があります。MITのOpen CourseWare(OCW)のような、教材に関する「オープン・コンテンツ」。教え方についての知識やノウハウに関する「オープン・ナレッジ」。そして教材や提出物のやり取りやコミュニケーション、成績評価などを行うツールに関する「オープン・ツール」です。この区分を読んで、「オープンエデュケーション」と呼ばれる取り組みの一部に対してどこかで感じていた引っかかりが解消されました。自分が「オープンエデュケーション」に期待しているのは、ただ教材や講義の動画を公開するだけでなく、それらを利用して効果的に学習が進むような仕組みまでを提供してくれることだということがはっきりと理解できたのです。そのためには、教え方についての知識や、ウェブ上で学習やコミュニケーションをスムーズに進めるためのツールが欠かせません。そして、そうした環境を整えることが、自発的な学び、つまり「オープンラーニング」をさらに促進していくのでしょう(オープンエデュケーションとオープンラーニングの関係については、前回のエントリを参照)。

OCWのプロジェクトが、MITでビジネスモデルを検討した結果「これはビジネスとしては成立しない」という結論になり、そこから議論が大転換して無料公開してしまうことになったというのも、非常に興味深い話です。このブログでも度々取り上げているように、アメリカのメディア・エンターテインメント業界では、ハリウッドに代表されるようにコンテンツの権利を徹底的に細分化・管理して収益に結び付けようという動きが当たり前のように行われています。彼らにとってはネット上でコンテンツを換金化するのが目下最大の関心事なのです。そんな国で、教育の世界とはいえ高額の学費を取る名門私立大学が、ふとした流れで(!)教材をネット上に解放してしまったのだから、そのインパクトは大変なものがあったはずです。こうした懐の深さが、アメリカの凄さなんだろうなと感じます。

「オープンエデュケーション」はまだまだ発展途上だとはいえ、現時点でもウェブ上にこれだけ学びのリソースがあるのだとすると「あとは使う側のやる気の問題だよ」と言われても仕方ない気がします。できる範囲でではありますが、自分もこれらを活用して、オープンな学びの道を進んでいきたいと思います。