中国とネットビジネス

Googleが中国政府のネット検閲に公然と異議を唱えたというのは最近の大きなニュースでしたが、この件について書かれた「田中宇の国際ニュース解説」の記事"グーグルと中国"(こちら)に、中国でのネットビジネスについて興味深い指摘が書かれていました。

田中さんは、国際情勢や時事問題について海外メディアの各種報道を読み込んだ上で独自の視点から分析を加えている方ですが、ここではTimeの記事 "Google and China: Silicon Valley Is No Longer King"(こちら)を元に次のような解説をしています。

中国市場では、ブランド性のある具体的な商品を持つ外国企業は、中国での利益の一部が中国側(共産党)に回るようにしてやれば、中国政府が作る非関税障壁を回避できて成功する。マイクロソフトが中国で成功したのに、グーグルやヤフーが成功しない理由の一つは、マイクロソフトはウインドウズなど具体的商品があったが、グーグルやヤフーは商品ではなく「仕掛け」であり、似たような仕掛けを構築した中国企業共産党とより良い関係を築いた結果、米国勢は敗北した。

上記Timeの記事から少し補足すると、そこでは、百度などをはじめとする中国のネット企業が興隆しているのは独自のイノベーションのおかげというよりも、アメリカで働いた経験を持つ中国人たちがそこで得た知識やスキルを持ち帰って国産企業として中国で創業したからだ、という見方が取られています。つまり、「創業する側」と「政府で有形無形の規制をかける側」が同じエリート層に属するため、国産企業では政府の意向を敏感に汲み取ったりロビー活動をしたりといったことがスムーズに行われやすい、という分析です。

なるほどな、と思いました。確かに、「仕掛け」や「仕組み」で成り立つビジネスはこうした規制の影響を受けやすいのかもしれません。でも同時に、田中さんの記事では成功者とされているマイクロソフトは中国でどれ程上手くビジネスをやっているのだろうかという疑問も感じました。この点、僕は詳しくないので実際どうなのかということはわかりません。でも、中国で販売されるソフトの8〜9割は海賊品で、Windows7も公式発売の前に中国で海賊版が売られていた…何ていう話を聞くと、ただ「商品」を扱うビジネスだからというだけで簡単に上手くいくことはないのではないかという気がします。特に、コピーしても品質が落ちない"情報"を商品とする場合はなおさらです。

だとすると、中国では外からきた企業が仕掛けをリードするのも難しければ情報商品を扱うのも困難を伴う、と言えるのかもしれません。13億の人口を背景にした巨大なマーケットがある一方で、中国はメディアやネット関連企業にとってはとりわけ進出のハードルが高い場所なのかもしれないな、と感じました。