発想とセンスが広げるネット・コンテンツの可能性

アジアやアメリカ、ヨーロッパなど各地で猛烈な寒気に襲われているようですが、BBCはイギリスに降った大雪の模様やその中での人々の暮らしを「Audio slideshow: 24 hours of snow」というスライドショーに仕上げてウェブサイトで公開しています(こちら)。これがすごく良くできていたので紹介します。

ご覧いただくとわかりますが、これは写真にニュース原稿や音楽などを加えた音声付きのスライド・ショーです。「雪」のイメージに合う曲やフォトエージェンシーからの写真などもありますが、主に使われているのはBBCのラジオで流れたニュース原稿の音声と、視聴者から送られてきた写真です。それらを組み合わせて4分半ほどの作品ができています。

面白いのは、ラジオニュースや視聴者投稿といったどちらかというと平凡な素材が、元の文脈(ニュースや投稿写真)と一旦切り離されてからブリコラージュのように貼り合わされることで、新しい輝きを持った要素としてスライドショーを彩っていることです。こんなリミックスというのもあるんだと感心しました。

このスライドショーは、大雪という「非日常」が持つ情感や物語性を強く感じさせるような仕上がりになっています。まるでちょっとした短編映画を見ているような。雪に悩まされている人たちや被害を受けている人たちがいるかもしれないことを考えると、こうした描き方というのはもしかしたらジャーナリズムのあり方としては賛否があるところなのかもしれません。

でも見方を変えると、物語性を加えることによって、これはただのニュースからよりインパクトのあるひとつのビジュアル作品になっているとも言えます。遠い国で降った多少の雪のニュースなど、普段であれば聞いても数分後には忘れてしまうような話です。でも、このスライドショーを見るともっといろんな想像が膨らみ、そこから関心も生まれてくるはずです。そういう意味では、使い方次第でこうした見せ方というのもありなのではないかという気がします。

テレビやラジオ、新聞などで流した大雪のニュースを自社のウェブサイトに載せたり、雪に見舞われている地域に住む視聴者から写真や情報提供を求めたりするというのは、今の時代さまざまなメディア企業が行うことでしょう。でも、同じ素材を持っていたとしても発想とセンスでこんなに面白い作品も生まれてくるのです。ネット上のコンテンツにはまだまだ可能性があるな、と感じました。


○関連エントリ 「ネットならではの報道コンテンツとは-3」 (2009/06/07)