バンダイがYoutube上でアニメを多言語配信

日経新聞に、バンダイYoutube上でアニメの多言語配信に乗り出すという記事が出ていました。海外でのキャラクター商品の販売に結び付けるのが狙いで、まずは自社が権利を持っている「たまごっち」を多言語で配信(日本語と英語の音声に加えて独・仏・スペイン語など7言語の字幕から選択可)するそうです。

Youtubeはこの夏頃からコンテンツに字幕を付加できるようになったり(関連エントリー)、字幕付きのコンテンツを自動的に翻訳してくれる機能がついたり(CNET Japanの記事)と、多言語対応を本格化させてきました。Youtubeの最大の強みは、動画の投稿・視聴の両面において世界中から膨大な数のユーザーを惹きつけていることです。そしてグローバルな動画プラットフォームとしてのYoutubeの魅力は、言葉の壁をなくすことによってさらに大きく増します。でも、たとえばBBCが早速Youtube上に載せている「TOP GEAR」などのクリップに多言語字幕を付加するようになったのとは対照的に、日本の企業はなかなかこの機能に目を向けて来ませんでした。今回の記事を見て、ようやくそんな動きが出てきたかと感じます。

それにしても、日本で真っ先にネットを通じたコンテンツの多言語・グローバル配信に乗り出すのがテレビ局などのメディア企業ではなくバンダイというキャラクタービジネスを核とする会社だというのは示唆的です。その理由はいくつか考えられます。まず、日経の記事にもあったように、バンダイの目的は自社のキャラクターが出る動画コンテンツを世界中で流して知名度を上げ、グッズ販売などを増やすことです。動画コンテンツ自体から儲けようというのが最大の目的ではありませんから、Youtubeに無料でコンテンツを提供することにそれほど大きな抵抗がないのかもしれません。また、アニメはドラマなどと比べては欧米を含む各国で受け入れられやすいコンテンツです。そのため始めから海外展開を視野に入れて制作されることが多いと言えます。さらにバンダイは、バンダイチャンネルのような配信ビジネスも手掛けているとはいえ、テレビ局のように自前のインフラを持ってコンテンツを届けている訳ではありません。インフラを持つということは、強みであると同時にそのインフラが規定するメディアや地理的な制約に縛られやすくなるということでもありますから、他社のプラットフォームを利用する際にはバンダイのような企業の方が自由度が高くなります。こうした要素が重なって、Youtube上で多言語を使って世界中に動画コンテンツを流すということに対して得られるメリットが大きいと判断したのでしょう。

このように考えてくると、インターネットが持つグローバル性をいちばん活用できるのは、ある一定の地理的エリア内のみで通用するインフラを持つメディア企業よりも、作品の権利と世界展開の意志を持つ一方でインフラは持たないコンテンツ企業なのかなという気がします。これは正にコンテンツ企業たるハリウッドが大きな力を持つアメリカのエンターテインメント産業の構造ですが、インターネットが映像コンテンツ配信のプラットフォームとしての存在感を増す中、日本でもそのような方向へのパワー・シフトが起きて行くのかもしれません。