Kangarooに降りかかったさらなる難題

企業間の自由な競争を妨げる恐れがあるとして当局からの調査が入っていたイギリスの地上波テレビ局連合(BBC, ITV, Channel 4)によるネット配信プラットフォームProject Kangaroo (仮称)ですが、イギリスの競争委員会(Competition Commission)が結論を出しました。結果は、「クロ」でした。

Paid Content UKの記事に詳しい解説が載っていますが、地上波で大きな力を持つ上記3局が共同でネット配信を行うとイギリスにおけるVODコンテンツの供給という点で著しく競争が阻害され、結果的に利用者の利益が損なわれるというのが結論の要旨です。

ただでさえこの調査によりサービスの開始予定が後ろにずれ*1、またCEOを務めていたAshley Highfieldが突然辞任してMicrosoftに移籍してしまう(関連エントリー)などゴタゴタが続いていたKangarooですが、今回の裁定はさらなる打撃となりそうです*2

今後の展開としては、たとえば以下のようにいくつかの方向性が考えられるそうです。
○Kangarooのサービスを禁止してしまう
○Kangarooが、コンテンツを自社で独占することなくライバル会社にも差別なく適切な値段で提供することを確約させる
○Kangarooのサイトと親会社であるBBC, ITV, Channel 4のサイトの連携を制限する(先日の記事で、「KangarooはiPlayerや4oDなど親会社であるテレビ局のネット配信と上手く連携して有料コンテンツと無料コンテンツの仕分けをすることで最大の力を発揮できる」ということを書きましたが、この案が採用されると、Kangarooに市場を独占させないためにその連携が意図的に抑えられることになります)
○7日間のキャッチアップ視聴期間が終了した後はテレビ番組のVOD配信権を製作者(プロデューサー)に戻させる

サービスの開始を禁止されてしまうなんてことのないよう、Kangarooはこれから必死でネット配信の競争環境が保たれるための方策を考え、競争委員会を納得させなければなりません。個人的には、上に挙げた例の中では2番目が最も可能性の高い落とし所なのかなという気がしますが、どうなることでしょうか。

ひとつのサイトからいろんなテレビ局の番組をネット配信で視聴できる*3環境ができれば、それは視聴者にとって非常に大きなメリットになります。わざわざあの番組をみるためにはこのサイト、これを見るにはそっちのサイト…というようにウェブ上を渡り歩かなくて済むようになるので、使い勝手が大きく高まります。でも、自由競争という点を考えるとそうしたワンストップ・プラットフォームには課題もいろいろとあるんだなということを、Kangarooをめぐる議論はよく示しています。

*1:当初は2008年中を予定していましたが、今は来年春になるだろうと言われています

*2:穿った見方をすれば、Highfieldはこうなることを見越して早々とKangarooに愛想を尽かしたと推測することもできます。

*3:KangarooにはFIVEという局が入っていないので、イギリスの地上波テレビ局全てをカバーしている訳ではありませんが。