日本の映像オンライン配信ビジネス
このブログでは、留学中に見つけた情報源などを使ってアメリカやイギリスにおけるネット配信事業の動向を追っています。でも、帰国してからは「じゃあ日本の状況はどうなってるんだ」ということが気になってきました。日本ではあまりこういう分野の成長見込みだとか市場規模がオープンな情報として出てこないように感じるのですが(僕が見つけきれていないだけかもしれませんが)、USENの決算報告書の中に面白そうなデータが出ていたので紹介します。
USENの2007年8月期決算説明会資料(PDF)のp.22に、日本の映像コンテンツ配信市場の成長見込みが出ています(元データは富士キメラ総研「2007ホームネットワーク関連市場調査総覧」)。それによると、PC向け無料配信、PC向け有料配信、IPTV、TV有料放送波という4分野を合計した市場規模は以下のように伸びていくと予測されています。
2005年:162億円(実績)
2006年:300億円(実績)<以下は予測値>
2007年:480億円
2008年:707億円
2009年:962億円
2010年:1,302億円
2011年:1,688億円
地上波テレビはもちろん衛星放送やケーブルテレビも除外された数値なので、「TV有料放送波」というのがどのようなサービスを指すのかはよくわかりません。でも、この予測によればまず「PC向け有料配信」が成長して、今年か来年あたりからIPTVが大きく伸びてくるという見込みになっています。
「こんなに大きな市場になっているんだ」というのが正直な感想でした。今後の成長具合はともかく、2006年までは実績の数値です。もちろん地上波テレビの市場規模(広告費2兆円)とは比べものになりませんが、これだけの規模があればコンテンツ・ホルダーや配信プラットフォームなどが参入する動機づけとして十分ではないかと思います。
ただ問題は、参入をしたところで上手くやっているという話をほとんど聞かないことです。バンダイチャンネルなんかは黒字でやれているのかなという気もしますが、はっきりとはわかりません。
これもある程度のデータが手に入るGyaoを例に考えて見ましょう。今度はUSENの2008年8月期中間決算説明会の資料(PDF)を参考にします。それによると、2008年度上半期の見込みでGyaoがおよそ20億円の赤字(+新規事業のGyao Nextがもう20億円程度の赤字)となっています(p.8)。そして、Gyaoの課題として「アクティヴユーザーの伸び悩み」「広告メディアとしての商品力の未確立」「営業体制の問題」が挙げられています(p.15)。その要因はいろいろとあるのでしょうが、知名度が低い新規事業者による参入の難しさ(ブランド力の弱さ)に加えて、既存のテレビ局や映画会社などからの強固なサポートがないことによるキラーコンテンツ不足という点が大きいのではないかと個人的には感じます。
この資料では、Gyaoは2010年に黒字化して以降は急成長、STBを用いた有料配信を行うGyao Nextは来年度には黒字化して安定成長に入るという見通しが示されています(p.13)。「いつでも、無料で」視聴できるネット配信という、よりユーザー本位のサービスが日本でもっと広がるように、Gyaoには奮闘してもらいたいところです。さてこれからはどうなっていくことでしょう。