五輪の視聴率とトラフィック

北京五輪の開会式の各国における”視聴率”が発表されています。中国では、何と97.7%の人がテレビで開会式を見たという調査結果になったそうです。「電話など」で1500人を対象に調査をした結果だといいますから、その正確さには多少疑問符がつくかもしれませんし、日本などで一般的に使われているような世帯視聴率と同一に考えることはできません。しかし、だとしてもすさまじい数字だと思います(*)。

開会式は、アメリカでも注目を集めました。NBCが放送した開会式は18.6%の視聴率を獲得し、アメリカ以外で開催された五輪としては最もよく見られた視聴率となったそうです。NBCが開会式を生中継(アメリカ時間では早朝〜朝の時間帯になります)せずに、プライムタイムの時間まで待って録画を流すことにしたという作戦が成功したとも言われています(Hollywood Reporterの記事)。日本でそんなことをしたら放送局に非難が殺到するでしょうが(恐らく日本であれば、深夜だろうと早朝だろうとまずは生中継した上で、それを録画もしくはハイライトでもう一度夜の良い時間帯に放送することにするでしょう)、アメリカ式の合理主義的な考え方だと、同じ内容を2度も流すのは無駄だということになるのかもしれません。

そして面白いことに、2000時間以上のライブ・ストリーミングをネット上で行うことで話題になっていたNBCのオリンピックサイトでも、テレビで開会式が放送されるまではその模様がウェブ上では見られないようになっていたそうです(Paid Contentの記事)。NBCは今回のオリンピックの広告販売で10億ドル(約1100億円)を越える売上をあげたと発表していますが、放送権獲得に8.9億ドル(1000億円弱)をつぎ込み、さらに多額の番組制作費もかかっているはずです。費用も収入も大半はテレビ用に支出され、またテレビから得られるのでしょうから、それを最優先するというのはビジネス上しかたのない判断なのかもしれません。ちょっと残念な気もしますが。

一方、それを知ってか知らずか、このサイトには大勢のユーザーが詰めかけ、開会式の行われた8/8(金)には7000万ページビューを記録したとのこと。前回アテネの時には、大会期間を通じて1日に最もNBCのオリンピックサイトが見られた時でさえ2000万ページビューだったと言いますから、この期間にネットの存在感が大きく上がったことが伺えます。

注目すべきなのは、テレビの視聴率、そしてウェブサイトのページビューがともに好調だったということです。開会式のケースだけを見て結論を出すわけにはいきませんが、もし、これから競技が本格化していく中でもテレビ、ウェブともに人々を惹きつけ続けるのであれば、「ネットで映像を流すとテレビの視聴者が減ってしまう」という通念には当てはまらないモデルが、少なくとも五輪のように全てをテレビでカバーし切れないほどの巨大イベントにおいては、生まれるきっかけになるのかもしれません。




(*)ビデオリサーチのデータによると、1964年に東京五輪が行われた際の開会式の世帯視聴率(関東地区)は、NHKが61.2%。民放でも開会式を放送したので、それを加えると82.6%になります。そう考えると、9割以上の中国人が開会式をテレビで見たという今回の発表は、実態とそんなにかけ離れてはいない気がします。