オンラインVODが国境を越えるには

動画コンテンツのオンライン配信を行う場合、いかに魅力的なコンテンツを取り揃えるかということがそのサービスの成否に大きく影響します。この点で、すでに強力なコンテンツを確保している放送局など既存のメインストリーム・メディアはとても有利な立場にいます(アメリカの場合は著作権自体は放送局ではなくハリウッドのスタジオなど制作側にあることが多いので、どこまで権利をクリアできるのかということがポイントになります)。ただ、これまでのエントリーでも何度か書いてきたように、英米のメジャーな放送局が行うオンラインVODはすべて国内限定のサービスです。「Huluを日本から見る方法」といった形の抜け道もウェブ上では紹介されていますが、サービスのデザイン自体はあくまで国内を対象にしたものです。

それでは、こうしたオンラインVODを正式なサービスとして国際化する方法はないのか。技術的には全く問題ないことなので、あとはコンテンツの制作から配信に関わる関係各社のビジネス上の判断次第、と言えるのではないでしょうか。自分の中では、「ユーザーのIPアドレスを元にして国ごとに別々のCMを挿入して番組とともに流す」といった広告のターゲット化を行うことで、もしかしたら国境の壁は越えられるのではないかという気がしています。もちろん、言語が違う国に対してはただ単に番組がオンライン上で国境を越えてやってくるだけでは不十分です。でも、例えばアングロ・サクソン英語圏ということで考えた場合、例えばイギリスからでもオーストラリアからでもHuluにアクセスできて、イギリスの視聴者に対しては英企業のCMが、オーストラリアからのアクセスに対してはオーストラリア向けのCMが流れるようになれば、広告主からの需要は上がるのではないかと思うのです。

ただ、こうしたモデルが技術的に可能なのかどうかということが自分にはよくわかりませんでした。そこで、はてなの「人力検索」に質問してみることにしました。そうしたら、早速お二人の方が答えを寄せてくれました。IPマルチキャストの手法を使えば技術的に不可能ではないけれど、コストを考えた時にビジネスとして成立するかどうかは何とも言えない、といったところのようです(詳しくはこちらでご覧ください)。

技術面ではもうハードルを越えていて、しかも合法的にこうしたサービスを提供することで海賊版に流れているユーザーの一部を取り込むことが期待できるのであれば、それはビジネスモデルになりえるのではないか、という気もします。いくら海賊版が人気を集めても放送局や制作会社などには何の収入ももたらしませんが、それが正式なサービスの視聴者となれば広告収入に結びつくからです。こんなことを早く実現してくれる会社があればいいのにな、と思います。