オンラインVODとプラットフォーム

Huluのことを扱った新聞記事などでしばしば弱点として指摘されているのが、大画面のテレビが普及し、(アメリカでは日本よりずっと遅れていると言え)ハイビジョン化も少しずつ進んでいる中で、パソコンの画面に向けて番組を配信するモデルには限界があるのではないかということです。

個人的には、テレビ局の番組編成に縛られることなく、好きな番組を好きな時に、手軽に、そして無料で見ることができるのであれば、そのサービスに対する需要はかなり大きいのではないかと感じています(実際、以前のエントリーでも紹介したようにインターネット上で動画やテレビ番組を視聴する人の数は急速に増えています)。また、オンラインVODのもうひとつのメリットとして、インターネットに接続できる環境とデバイスがあればパソコン上でなくともコンテンツを視聴できるということが挙げられます。例えば、Apple TVTivoYoutubeと提携して、Youtubeに投稿された動画をテレビの画面上で簡単に楽しむことができるような機能を備えていますし、ゲーム機のWiiでも同じようなことができます。画質の差はあるにしろ、ネット上の動画は必ずしもテレビで視聴できないわけではありません。

それから、昨年の秋から日本でサービスを開始したアクトビラは、ブロードバンド回線を利用して自社が配信する権利を得た映画やテレビ番組の有料ストリーミングを行っています。ただし、ここのウェブサイトを見た感じでは、少なくとも今の時点では品揃えがあまり充実しておらず、またその割にはレンタルの単価が高いように思いました。さらに、アクトビラを通じて動画を視聴するためには、それなりの高速接続(一般の場合は実効速度6Mbps,高画質モードの場合は12Mbps)が必要になります。ブロードバンドの普及と接続スピードでは日本の方がアメリカよりもずっと先を行っているので単純な比較はできませんが、LAでケーブル(タイムワーナー)と契約してインターネットに接続している我が家の接続速度は、アクトビラのサイトにあるスピードテストで何度か計ってみたところ2.3〜3.5Mbps。仮にアクトビラアメリカで利用できたとしても、標準画質のコンテンツでさえまともに視聴できない環境にあるようです。ブロードバンド回線を使って高画質のプレミアム・コンテンツをテレビ画面に向けて配信しようという取り組みは評価できますが、解決すべき課題はいろいろとあるようです。

インターネットを通じた動画配信のプラットフォームとしてパソコンのほかに考えられるのは、テレビだけではありません。特に携帯電話を通じたネット接続やワンセグによる携帯でのテレビ視聴が急速に普及している日本の状況を考えると、動画コンテンツの携帯電話へのオンデマンド配信をどうするのかということは重要なポイントだと感じられます。その意味で、先日BBCが発表した「iPlayer(BBCが提供するインターネット上のオンラインVOD)をiPhoneおよびiPod Touchに対応させるという試みは注目に値します。これまでパソコン向けだったBBCのサービスを携帯端末向けにも対応させた初めての事例だからです。利用するにはもちろん無線LANなどに接続できる環境にいることが必要ですが、パソコン向けのサービスと同様、放送後1週間以内の番組を携帯で無料で視聴することができるようになります。これを日本の状況と組み合わせて、テレビ番組をオンタイムで視聴するならワンセグ(放送波の受信)、タイムシフトで視聴するならインターネット経由(携帯向けのオンラインVOD)と使い分けられるようになれば、動画コンテンツを視聴するメディアとしての携帯電話の価値はさらに高まるのではないでしょうか。