過去の番組もインターネットで

2006年から始まったアメリカのTVネットワークによる番組のオンライン配信は、ABCやNBCなどのチャンネルで放送したプライムタイムの番組を1日後に自局のネット上にアップし、一定期間(大体ひと月程度)見られるようにするというのが基本的なモデルでした。提供するのは最新の番組で、タイムシフト視聴する視聴者や近い過去の番組を見逃してしまった人たちを取り込むのが最大の狙いでした。

でも、ネットワーク局は最近相次いで過去の人気番組もネットでストリーム配信すると発表しています。NBCが先月下旬に「マイアミ・バイス」「特攻野郎Aチーム」「ヒッチコック・アワー」などの番組を自身のウェブサイト上で配信すると発表し、それとタイミングを合わせたかのように翌日にはCBSが同様の発表を行いましたCBSが提供するのは「スタートレック」「トワイライト・ゾーン」「メルローズプレイス」などだそうです。さらに、ABCの親会社ディズニーも今月7日、近いうちにDisney.comを通じてコンテンツの配信に乗り出すことを明らかにしました。これを報じたNY Timesの記事によると、ディズニーの場合はどんなラインナップになるのか、また形態も無料なのか何らかのサブスクリプションになるのかは明らかにされていません。

NBCとFOXは既にHuluという共同ベンチャーを通じて昨年の秋から番組のオンライン配信に乗り出しています。HuluはNBCとFOXの番組だけでなくSonyやMGM,いくつかのケーブル・チャンネルなどとも連携してコンテンツを集め、新作・旧作ともに幅広い番組を公開しようとしています(Huluのことは近いうちにまた書くつもりです)。なので、ABCとCBSが今回の発表を行ったことでアメリカの4大ネットワーク全てがオンライン配信する番組の範囲を大きく広げる方向に舵を切ったことになります。

さらに、今日のHollywood Reporterの記事によれば、ワーナーも過去の番組をネットで流すことを計画中だということです。1995年に撤廃されたフィンシン・ルール(ネットワーク局が外部のプロダクションに発注した番組の所有権を持ったりそれらの番組を利用したシンジケーション・ビジネスを行ったりすることを禁じた規制)はディズニーによるABCの買収やバイアコムパラマウントの親会社)とCBSの統合など、映画スタジオとテレビ局のいわゆる垂直統合が進むきっかけになりました。この流れの中で、それまでネットワークのテレビ局という自営の番組配給網を持たなかったワーナーはWB Networkというテレビ・ネットワークを設立しました。しかしあまり人気がふるわず、WBは同じようにフィンシン・ルールの撤廃を受けて設立されたUPNと合併して2006年にCWという名前に変更されています。今回のワーナーの計画は、来月にもネット上にWB Networkを復活させて1995年から2006年までの間にこの局で放送された番組(「ギルモア・ガールズ」や「エバーウッド」といった名前が挙がっていましたが、僕には馴染みのない番組です)を配信しようというものです。

こうした動きは全て、アメリカのTVネットワークや映画スタジオが番組のネット配信をビジネスの場として一層重視し始めていることを示しています(多くのコンテンツの著作権を持つ映画スタジオの許可がなければ、ネットワーク局が番組をオンライン配信することはほとんど不可能です)。今のところは提供される番組の数も限られているようですし、全てのエピソードが見られるのかどうかもわかりません。権利処理が困難な場合はラインナップから外されてしまうことでしょう。ただ、これらのニュースを読んで、テレビ番組のネット配信が加速しつつあることを実感しました。