スポーツ映像のオンライン配信

メディア企業が行うウェブ上の映像配信ビジネスと言うと映画やテレビ番組などのイメージが強いのですが、最近のエントリーでも紹介したように、スポーツも非常に有力なコンテンツです。スクリーン・ダイジェストが発表したリポートでは、90年代以降サッカーや野球、アメフトなどのメジャーなスポーツがケーブルテレビや衛星放送の有料チャンネル普及に大きな役割を果たしたのと同様に、今後はスポーツがウェブ上の映像配信事業を発展させるひとつのブースターになるだろうと予測しています。

そのリポートによると、アメリカでもイギリスでもウェブ上のスポーツビデオ(オンライン・スポーツ・ビデオ、OSVという書き方をしています)が視聴される回数は2007年から2012年までの間に倍以上になり(アメリカ:52億回→108億回、イギリス:4億回→12億回。ダウンロード、ストリームともに含む)、そこから得られる収入も大きく伸びるだろう(アメリカ:7.6億ドル→23億ドル、イギリス:4300万ドル→1.5億ドル)と予測されています。オンライン・スポーツ・ビデオという言葉は、競技の生中継や時差再生だけではなくハイライトやミニ・クリップ、スポーツニュースや解説番組なども含まれるのでかなり広い範囲を指して使われています。そうしたスポーツ関連のコンテンツ全般が今後ウェブ上で成長していくということなのでしょう。

2007年に国内でストリーム/ダウンロードされたテレビ番組(テレビ番組と言い切れるのかどうかはちょっと確信が持てません。原文は All online TV streams/downloads)のうちOSVが占める割合はアメリカで35%、イギリスで46%だったと言う数字にはちょっとびっくりしました。スポーツ関連の映像がウェブ上でそれほど大きな存在感を持っているとは思っていなかったからです。サッカーのプレミアム・リーグやアメフトのNFLなどの放送権がこの10年ほどで急カーブを描いて上昇したことからもわかるように、人気のあるメジャー・スポーツの世界ではコンテンツの権利を押さえている側がそれを配信する側(テレビ局、ケーブル・チャンネルなど)よりもずっと大きな力を持っています。リポートにも書かれているように、オンライン配信が可能になったことにより、スポーツクラブや競技団体などのコンテンツ・ホルダーは地上波のテレビ局やESPNやSkyなどのスポーツ・チャンネルを経由せずとも自らの手で直接、しかも大きな設備投資をすることなくスポーツ映像を視聴者に送り届けることができるようになりました。スポーツ映像のオンライン配信が発展するということは、従来のテレビ局など配信サイドとの関係が変わってくるということなのかもしれません。