iPadは働き方の「プチノマド化」をもたらすか

週末からいろいろなiPadのレビューや使った感想などを読んできました。自分で触った訳ではないのであくまで二次情報をもとにした印象ですが、こんなことを感じました。確かにiPad電子書籍リーダーでありスクリーンの大きな動画再生機でありゲーム機でもあるけれど、このデバイスは情報やコンテンツのインプットだけでなくアウトプットも考慮に入れて作られているため、働く人々の「プチ・ノマド化」を後押しする可能性があるのではないか、と。

日本のTwitter利用率は8.2%どまりだったという富士通総研の調査が少し前に話題になりましたが(CNET Japanの記事などを参照)、実際に日々の日中帯に幾度もTwitterでつぶやける人の数は、その8.2%の中でもさらにごくわずかなはずです。フルタイムの仕事を持つ人の中では、ジャーナリストや研究者、経営者、ベンチャーで働く人々などが主でしょうか。興味深い情報や意見をコンスタントに発信してくれる人も多いので僕もそうした方々をTwitterでフォローしているのですが、一方で自分の身の回りを振り返ると、Twitterができるのは仕事のない朝と夜だけ、という人が少なくありません。日中は、たとえ休憩時間であっても会社のパソコンでTwitterを見たりその他のウェブサイトにアクセスしたりすることができない、といった人々です。情報の収集や発信に関心はあっても日中はそれができる状況にない人が、少なくとも日本ではまだまだ大勢いるのです。

iPhoneは、その状況に風穴を開けました。自分個人のメールアカウントに簡単にアクセスできますし、文章ファイルやウェブサイトの閲覧も快適です。ただ、昼休みにTwitterに投稿するぐらいのことは問題なくできても、あの携帯電話のスクリーンでは、長文のメールを書いたりブログのエントリを考えたりするにはちょっと使いづらい気がするのは否めません。iPhoneは、自分が関心を持つ情報をインプットするという点では非常に役立ちますが、アウトプットの用途では使える度合いが限られています。

iPadはそのアウトプット面で大きな飛躍を遂げています。タッチスクリーンのキーボードもそれなりに使いやすいという評価を得ているようですし、あれだけの画面であれば文章を書くことも問題なく行えるでしょう。ストレスを感じずに情報のインプットとアウトプットの両方が行えるはずです。そして、同じような機能を持つネットブックよりiPadの方がずっと見た目がスマートだというのも大きな強みです。つまり、個人としての情報収集や発信に興味はあってもわざわざネットブックを買って通勤バッグに毎日入れてまでする気にはならなかったという人々(の一部)が、iPadの登場でその面倒くささが緩和されてちょっとした格好よさが加味されることにより、仕事の前後や休憩時間などに個人としての活動をより積極的に行うようになるのではないかという気がするのです。

これが、働く人々の「プチノマド化」です。仕事に興味を持ち、夢中になって働くというのはもちろん素晴らしいことですが、今の時代、職場で行う仕事を離れたところで興味を持てる対象に出会うことも普通に起こり得ます。本業をおろそかにするというのではなく、それに隣接する空き時間などを利用して、会社のリソースに頼ることなく自分の関心分野に取り組む上で、iPadのように持ち運びができて情報のインプットにもアウトプットにも使えるデバイスというのは強力な味方となります。iPadはかなり強気の販売台数が想定されているようですから、ワイヤレスのネットワークを提供するカフェなどのいわゆる"サード・プレイス"や、オフラインでもある程度の作業ができるAppsなどの充実と歩調をあわせてiPadが普及していくと、「働き方」に対するインパクトと言う面でも興味深いことが起きるのかもしれないなと期待しています。