ジオメディアの娯楽性とそのインパクト

ジオメディアに対する注目は主にマーケティング・ツールとしての可能性と娯楽性の高さという2つの側面から来ているのではないか、という話の2回目です。前回マーケティングのことを取り上げたので、今日はジオメディアが持つ娯楽性とその影響について考えてみます。

FourSquareやGowalla、Geocachingなどのジオメディアは、ソーシャル・ネットワーキングの要素を持ちながらもサービスの根幹にゲーム性が組み込まれています。同じ場所に何でもチェックインすると称号がもらえたり、宝探しや宝隠しをしたり、アイテムを交換したり。ユーザーを惹きつける工夫はそれぞれですが、リアルの世界と密接に関わったエンターテインメントとネットワーキングをウェブ上で、主にiPhoneなどのスマートフォンを使って楽しむことができるというのがジオメディアの大きな特徴です。前々回のエントリ(こちら)で触れたように、FourSquareは現実社会での友人関係を重視したサービスを目指していて、一方RealTimeWeb.jpさんがGowallaは「知らない人/場所との出会いを重視している印象を受ける」と書いているように(こちら)、ジオメディアの中でもネットワーキングの方向性はさまざまです。でも、位置情報をキーワードに、従来のSNSとはひと味違い、従来のゲーム機で行うゲームとも異なる場が携帯電話上で生まれつつあるのは確かです。

こうした変化は、ゲーム機、特に携帯ゲーム機に対して大きなインパクトを与えるようになるのではないかという気がします。ジオメディアの成長とは対照的に、携帯ゲーム機で位置情報を本格的にゲームに取り入れる動きが見られないからです。これまでにあったのは、PSPがGPSのレシーバーを発売したとか(もう3年以上前の話ですが。PSPのウェブサイトを参照)、特定の場所でソフトをダウンロードすると限られた範囲内で位置情報を使ったサービスを提供する「イクスピアリニンテンドーDSガイド」(Game Watchの記事)というサービスが展開されたというようなほぼ単発の事例のみです。昨日第一報が発表された任天堂の新型DS(ロイターの記事などを参照)も売りは裸眼での3D映像とのことですので、少なくとも現時点では位置情報を重視している印象は見受けられません。だとすると、ジオメディアはますますスマートフォンベースで成長していきそうです。

通信回線の問題とか、あるいは大人と比べて一般的に移動範囲が狭くプライバシーにも一層の配慮が必要な子ども向けのゲームでは、日常生活の位置情報を使ったゲームが作りにくいといった事情はあるのかもしれません。とはいえ、「ゲーム」を売りにしている機械なのにスマートフォン上で注目を集めている「ゲーム的体験」を提供することができないというのであれば、それはサービス面でもイメージ面でもマイナスに働くことでしょう。iPhoneのアプリとして売られているゲームに任天堂など既存の主流ゲーム会社が神経を尖らせているといった話を時折耳にしますが、ゲームの安さやiPhoneが持つ加速度センサーといった機能だけでなく、ジオメディアのプラットフォームになれるかどうかという点も、ゲーム機としての今後のスマートフォンとDSやPSPとの競争に影響を及ぼすのかもしれません。