PBSの「Digital Nation」
前回に続いて番組のことを書きますが、先日アメリカの公共テレビPBSのドキュメンタリー「FRONTLINE」で放送されたた"digital_nation: life on the digital frontier"を紹介します。このエピソードを見て、いろいろと考えさせられることがありました。こちらもネット上で日本からでも見ることができます。
http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/digitalnation/view/
「FRONTLINE」は以前からデジタル技術が人々の生活や子どもの意識・行動などに与える影響などを取材して番組にしてきましたが、その最新作が"digital_nation"です。
番組は、世界で一番「デジタル・ネイティブ」な学生たちが集まる場所の一つと言えるMITのキャンパスで幕を開けます。常にネットに接続していることが当たり前という彼らは、教室にノートパソコンを持ち込み、講義を聞きながらもスクリーン上でいくつものウィンドウを開いて、Googleで検索したりメールをチェックしたりFacebookを覗いたり、と同時にに複数のことを並行して行っています。でもこうした「マルチ・タスキング (multi tasking)」こそ最も効率的な時間の使い方だとする彼らの思いとは裏腹に、スタンフォード大の研究者による調査ではマルチ・タスキングを行う人々は集中力がなく、常に他のことに気を取られ、同時に行っていることのどれを取っても効率的に出来ていないという結果も出ているそうです。
また、「ネット最先進国」である韓国で、オンライン・ゲーム依存症になってしまった子どもたちを治療するためにネットやパソコンと隔離された状態で生活させる「レスキュー・キャンプ」が設けられたという話や、日々自宅からネバダ州の基地に出勤し、無人の戦闘機を遠隔操作してイラクやアフガニスタンなどの戦闘地域を爆撃するパイロット("drone pilot"と呼ばれています)が経験する、「仕事」と「日常」のあまりに大きなギャップといったことも番組で取り上げられています。デジタル技術はすごく便利なものではあるけれど、圧倒的な手軽さや没入感を持つがゆえに、一歩間違えるととそれを使いこなすのではなく逆にそこに閉じ込められてしまうのだということを、豊富な事例で示しつつ警鐘を鳴らした番組だと言えるかもしれません。
ひと言で感想を述べるのは難しいのですが、デジタル技術との付き合い方にはオプティミズムだけでなく慎重さも必要なのだなと感じさせられる番組でした。86分とかなり長めですが、とてもよく取材してありますし、比較的英語は聴きとりやすいと思います。また、番組と合わせてウェブ向けのコンテンツとしても展開されているので、「digital_nation」のウェブサイト(http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontline/digitalnation/=こちら)からもいろいろな関連情報を得ることができます。デジタル技術がますます暮らしの中に入り込んでくるにつれて立ち現われてくるだろう問題がいくつも取り上げられている番組です。興味のある方は、ぜひご覧になってみてください*1。