「Ally Mcbeal」のDVDがようやくアメリカでリリース

Video Businessのサイトに、「『Ally Mcbeal(邦題:アリー my LOVE)』のDVDがアメリカで10月に発売される」という記事が出ていました(こちら)。一見、「えっ、今さら?」と思ってしまいます。「Ally」がFOXで放送されたのは1997〜2002年、もう10年も前のドラマですから。それでもDVDのリリースが決まって話題にもなるというのは、このドラマの根強い人気を表すとともに、いかに権利処理が大変だったかということも示しています。

ずいぶんと前ですが、音楽の権利(Music Rights)が番組をDVD化する上で大きな障害となることがあるというエントリを書いたことがあります(こちら)。その時にも取り上げましたが、「Ally」は音楽権のせいでアメリカでDVD化されて来なかった代表的なドラマのひとつです。Amazon.comのサイトで「Ally Mcbeal」を検索すると(こちら)、今回発売が決まった完全版の全シリーズボックスセット(Complete Series)と第1シーズンのセット(Complete First Season)を除いてはイギリスから輸入されたリージョン2のバージョンが並んでいます*1

番組をご覧になったことのある方はおわかりだと思いますが、「Ally」は音楽の使い方が非常に上手いドラマでした。特に効果的に使われていたのが60〜70年代のソウルやR&Bを中心とした昔の名曲です。でも皮肉なことに、ドラマを成功に導いたひとつの要因であるこうした楽曲の存在が、テレビ局や映画スタジオなどに多くの収益をもたらすDVD化を阻んできたのです。

なぜ音楽がコンテンツの2次展開にとってこれほど強力な阻害要因となり得るのか、僕はいまだに納得できる答えを持っていません。でも「Ally」のケースから言えるのは、プロデューサーによる権利の一元化が進んでいるアメリカのテレビ・映画業界においてさえ、プロデューサーが音楽の権利まではコントロールし切れないような仕組みあるいは力関係が存在する場合があるということです。一方で、さまざまなメディアに向けたコンテンツ展開が今後ますます活発になっていくのは確実でしょうから、包括的な音楽の権利を確保することの重要性はいっそう高まるはずです。このあたりのせめぎあいはなかなか表には出てきませんが、実はマルチ・プラットフォーム時代のコンテンツビジネスにおいて鍵となるポイントのひとつなのではないかという気がします。

*1:アメリカがリリースNGでイギリスならOKだった理由はよくわかりませんが。