「ハドソン川の奇跡」機長インタビューをネット配信で

離陸直後に両側のエンジンが推進力を失いながら見事な操縦で飛行機をハドソン河に着水させて乗客・乗員を救ったパイロットのチェスリー・サレンバーガー氏はその後ほとんど公の場に姿を見せて来ませんでしたが、CBSの番組「60 Minutes」のインタビューに応じた映像がこの週末に放送されました。実はこの番組、CBS Newsのサイトに行くと日本からでもネット配信で見ることができます。

ご存知の方も多いかと思いますが、「60 Minutes」はアメリカを代表する報道番組です。1968年に放送が始まり、ダン・ラザーやウォルター・クロンカイトをはじめとする著名ジャーナリストがキャスターを務めたことでも知られています。ニュースというよりも、時事問題から選ばれたテーマをインタビューなどを通じて深く追求するという、日本ではあまり見られない「調査報道」を中心とする番組で、堅い内容を扱いながら視聴率トップ10の常連でもある程アメリカでは大きな支持を受けています。実際に僕もこの番組を見るたびにその質の高さに感心してしまいます。報道の最高峰を行く番組のひとつと言えるでしょう。

「60 Minutes」は、音声のみですがiTunesでも無料提供されています。それはそれで聴き応えがあるのですが、やはり元々はテレビ用に作られている番組ですから映像と合わせて見る方が話が自然に理解できます。特に今回は「ハドソン河の奇跡」と呼ばれるほどのことを成し遂げた機長を取り上げる回ということでいつも以上に興味があったのですが、サレンバーガーさんの謙虚な姿がとても印象的でした。危機的な状況に冷静に対処した機長ですが、当時の心境をとても素直に語っています。

(ハドソン河で救助にあたったレスキューボートの救助隊に何と言いたいかと問われて)「ありがとう」なんて言葉では到底語りつくせない。私は、生涯かけても返済することのできないほどの「感謝」という名の借金を彼らに負ったのだと思う。(Thank you seems totally inadequate. I have a debt of gratitude that I fear I may never be able to repay.)

(飛行機から降りた時に非常に冷静でプロ意識に満ちていたという証言があると言われて)そう見えたかもしれないが、私はショック状態でした。飛行機を墜落させたんだと。(I may have looked like it, but I was in shock. I just crashed an airplane.)

聞き手も機長も淡々と話をしていくのですが、無理に雰囲気を盛り上げようとするような演出が全く行われていないところが却ってこのインタビューを心に食い込むようなものにしています。また、この機長の家には今各地から応援の手紙が続々と届いているそうですが、その中には「君にビールをご馳走したいんだ」と手紙と一緒に5ドル紙幣が入っていたなんていうのもあったということです。こういう話って、いいですね。

「ハドソン河の奇跡」は、何年かしたら映画化されるんじゃないかと思いますが、どんなに臨場感あふれる演技や映像があったとしても、当事者が語る静かな回想や何気ない後日譚から得られるような感動は得られないでしょう。そんな意味で、今回の「60 Minutes」はお薦めです。興味のある方はぜひご覧になってみてください。インタビュー原稿を全て書き起こしたものかどうかはチェックしていませんが、CBS Newsのサイトにはこのインタビュー関連のテキスト・ニュースも載っています。