アメリカのアナログ停波とネット配信-2

昨年の秋に「アメリカではアナログテレビの停波が地上波テレビの視聴者減少をもたらすのではないかと懸念されている」というエントリーを書きましたが、多くの人の予想通りと言うべきか、アメリカのデジタル放送への移行は計画していたようには進まないようです。

オバマ陣営が「スイッチオーバーを先延ばしすべき」という提案を出したことは日本でも広く報じられました(例えばCNET Japanの記事)。デジタルテレビを受信できない家庭がまだまだ多いことを考えるとこれは妥当な提案ですが、コンバーターを買うための40ドルのクーポンを配布するだけでどれほどの効果があるのかは未知数です。

上記の記事には「10万人以上の国民がクーポンの配布を待っている」と書かれていますが、Nielsenが発表した最新のデータでは、1月18日時点でアメリカの家庭の5.7%にあたる650万世帯がデジタルテレビを受信できない状態にあるとされています。「クーポン待ち」とされる人の数と比較にならないほど大きな数字です。ケーブルTV大国と言われるアメリカでも、実際にはかなり多くの人が電波を受信してテレビを見ていることが窺えます。昨年12月の時点(780万世帯)と比べれば急ピッチで減っているとはいえ、あとひと月でこれがほぼゼロになるとは考えられません。デジタルテレビが受信できない人の多くはケーブルTVなどの有料サービスに加入できない低所得の人なのではないかという推測もできますから、そうした人々を置き去りにして完全にデジタルテレビに移行するというのは、いくら様々な場面で「Do it Yourself」が基本原則となっているアメリカとはいえ簡単にはできないでしょう。

無理にデジタル移行を押し切ってしまえば視聴者数が減ってしまうし、かといってデジタルとアナログの併存が長引けばその分送信設備の整備・保守などで二重の経費負担を強いられてしまう。どちらにしろ、アメリカの地上波テレビにとっては頭の痛い状況になりそうです。