Youtubeと非営利活動

前回に続き、少し前に読んだYoutube関連の気になる記事を紹介します。今回はYoutubeから利益を上げようというよりも、非営利でYoutubeを教育に役立てようとする試みについての話です。

先月のLA Timesに、「Using Youtube as a study aid」という記事がありました(元々の出所はAP)。それによると、最近のアメリカの大学生の中には、数学や化学などの課題を解く際にYoutubeを検索して参考になりそうなビデオを探すという人が結構いるんだそうです。逆の見方をすれば、学生のチューター(指導役)代わりとなるようなビデオを投稿している人がいるということです。

どんな感じのビデオがあるんだろうと記事中で紹介されていたKhan Academyのサイトに行ってみたら、あまりにコンテンツが充実していたので驚きました。こちらです。微分積分、代数、物理、確立といった理数系の基幹科目から緊急、銀行業(Banking)、そして住宅ローンや最近日本でもすっかり馴染み深い言葉となった「ベイルアウト(金融機関などの救済)」に至るまで、数百の動画が掲載されています。

創設者のSalman Khanはテクノロジーを生かして新しい学習モデルを作り上げるために非営利でこのプロジェクトを始めたんだそうです。Khanの現職は投資信託会社のポートフォリオ・マネージャー。ハーバードのMBAに加えてMITで電気工学とコンピュータ・サイエンスの修士号を持つという秀才です。金融や数学の講義をするのも、ウェブサイトを作り上げるのもお手の物だったことでしょう。

LA Timesの記事では、こうしたYoutube上の学習支援動画の優れた点として「学生が自ら学ぶ気になっている時に見ることが出来ること」と「理解するまで何度でも繰り返し見ることが出来ること」を挙げています。要するに、学習のオン・デマンド化ですね。確かに、昼食後の授業で難解な数学の公式を教えられたりしたら眠気の方が勝ってしまいそうですから、いつでも、何度でも視聴できるというYoutube上の学習ビデオはその作りさえしっかしりていれば学生にとって非常に価値のあるものとなるでしょう。

内容が内容ですから、Khan Academyのビデオは前回取り上げた"What the Buck?"のように数十万回、数百万回とアクセスされるようなものではありません。数千回程度のものが多いようです。そういう意味では、こうしたアカデミックなビデオはお金になりにくいコンテンツです。でも、アメリカ流資本主義の総本山とも言えるハーバードのMBAで学んだKhanのようなエリートが、現金収入とは異なる価値観を持ってこうした事業に取り組んでいること、そしてそのためのプラットフォームとしてYoutubeを利用していることは、エンターテインメント動画の投稿/視聴に留まらないYoutubeの「"場"としての可能性」を示しているように思えます。