Youtubeで生計を立てる個人クリエイター

Youtubeが人気コンテンツを制作・投稿するユーザーに広告収入の一部を分配し始めたのは1年以上前のことですが、実際Youtubeを利用する個人クリエイターたちにどれほどの収益還元がなされているのかという話はあまり聞いたことがありませんでした。でも、少し前の話になりますがNew York Timesにそんな成功者の事例を取り上げた記事が出ていました。

YouTube Videos Pull In Real Money」と題された記事がそれで、Michael Buckleyという人のことを紹介しています。BuckleyはLive Nationという音楽のプロモーション会社に勤めながら、趣味として芸能人のゴシップなどを面白おかしく取り上げるトークショーを自らがホストとなって制作していました。その番組は元々コネチカットのパブリック・アクセス・チャンネル*1に向けて作られた非常にパーソナルでニッチなコンテンツだったのですが、その抜粋をいとこがYoutubeに投稿したところウェブ上で大きな反響があったので、Buckleyは番組に"What the Buck?"というタイトルをつけて本格的にYoutube向けの投稿を行うようになります。1セントも得られないまま週40時間も番組制作に費やして毎週数回出来上がった番組を投稿するという日々を1年以上も続けた結果、"What the Buck?"は徐々に人気を獲得していきます。そしてBuckleyはYoutubeのパートナー・プログラムのメンバーに選ばれ、番組に広告が挿入されてその収入の一部を受け取れるようになりました。彼の投稿する番組が1本平均で20万回以上も視聴され、本業よりもずっと多くの収入をもたらすようになったため、Buckleyは昨年9月に会社勤めを辞めて番組作りに専念することにしたそうです。

Youtube上にある"What the Buck?"のチャンネルはこちらです。速射砲のような「ひとりワイドショー」と言えばよいでしょうか。アメリカの芸能事情に明るくないからか、僕はあまり面白いとは感じませんでしたが、たしかに最近のコンテンツも大体20万回以上見られていますし、Hannah Montanaを取り上げた回は7か月で500万回以上も再生されています。New York Timesの記事でBuckleyはこれまでYoutubeからの分配金で10万ドル以上を手にしたと述べていますが、制作費がほとんどかからなそうな作りですし、台本も出演も撮影も編集も全部1人で出来そうですから、それだけ稼げれば十分に生計を立てることができるのでしょう。

芸能人をネタにして囃し立てる番組を何の後ろ盾ももたない個人が作ったら、いろんなところから圧力がかかったり、特にアメリカではあっという間に訴訟を起こされたりするんじゃないのかという気もするのですが、この番組についてはそうなっていませんね。それどころかBuckleyはケーブルテレビのHBO(「The Sopranos」や「Sex and the City」などを放送した有力チャンネル)から番組開発のオファーを受けたり、他のケーブル局のトークショーに出演したりと、Youtubeをきっかけに活躍の場を広げています。日本ではあまり起きそうにないことかもしれませんが、これも一種の「アメリカン・ドリーム」なのかもしれません。

*1:アメリカにある多くのケーブルテレビ局が持つ、視聴者参加型のチャンネル。番組制作のワークショップ受講など一定の条件を満たした地域の団体や住民たちが制作した番組を次々に流していく。