日テレと吉本がHuluでもネット配信開始

ひと月ほど前のエントリーで日テレと吉本、電通が共同でJoostを使ってアメリカ国内に向けたコンテンツのネット配信を始めたという記事を書きましたが、同じメンバーが今度はHuluを通じた配信に乗り出しました。日テレのプレスリリースはこちらです。それによると、Huluのサイトに「JAPANESE HUMOR〜OWARAI〜」(ジャパニーズ・ユーモア〜お笑い〜)というチャンネルを作って、そこで「ガキ使」や「電波少年」といった日テレの番組や松本人志が出演する吉本制作のコンテンツなど合計4タイトル、53本、9時間分を流すんだそうです(電通は広告枠の販売で協力)。

Hulu上にはもうこのチャンネルが立ち上がっています。こちらです。Huluは現時点ではアメリカ限定のサービスなので米国外からは基本的に動画を視聴することができませんが、各クリップのサムネイル画像は見ることができます。スマートにデザインされたHuluのサイト上にダウンタウンや懐かしのなすびの顔が載っているのを見るのは、多少感慨深くもあります。

このニュースを伝える日経新聞のウェブ上の記事は「Huluは2008年夏から急速に視聴者数を増やしており、同サイトでの配信開始で日本のお笑い番組の認知度が急上昇する可能性がある。」と楽観的なトーンで書かれています。でも、以前のエントリーでも書いたように、僕は英語の字幕をつけてネット配信しただけで日本人が出演するお笑い番組が他国で大評判になるなんてことはなかなか起こらないだろうと思っています。Huluを使うアメリカ在住の日本人は喜ぶでしょうが、それ以外のユーザーをどれほど惹きつけることができるのかと考えると、そんなに見通しは甘くないでしょう。

でも、現在計画が進められているというHuluの国際化という視点から見ると、今回の提携は大きな意味を持っているのかもしれないとも感じます。

Huluは、現地企業と共同でローカル版Huluを立ち上げることで国際展開を進めようとしていると言われています(関連エントリー)。そして、日本はイギリスやドイツなどとともに海外展開の優先ターゲットのひとつにカウントされています(関連エントリー)。しかし、日本国内でのテレビ番組のネット配信はアメリカやイギリスなどと比べて大きく後れを取っています。地上波のスポンサーへの配慮や権利関係の処理などが壁となっているからです。

そんな事情を考えると、Huluを通じて行う国内番組のアメリカ向けネット配信は、日テレや吉本にとってもHuluにとっても、いずれHuluが日本に上陸する際に向けた下準備だと捉えることができるのではないでしょうか。たとえアメリカ向けの配信が商業的にはあまり上手くいかなかったとしても、権利処理のノウハウを身につけ、出演者やタレント事務所、スポンサーなどのネット配信に対するアレルギーを減らすことができれば、日本でテレビ番組のネット配信を本格化させる下地が整うことになるからです。現地メディアと連携しながら国際展開を進めたいHuluと、広告付きの無料ネット配信を日本でビジネスとして成立させたい日テレや吉本、電通の思惑が重なった結果として最初に現れたのが、今回のHuluを通じたアメリカ向けネット配信ということなのかもしれません。