トリビューンの破たん

アメリカの大手新聞をいくつも傘下に持つトリビューンが破たんしたというニュースが大きく報じられています(たとえばCNNの記事)。負債総額は1兆2000億円に上るんだとか。僕はLAにいた時にロサンゼルス・タイムズ紙の記事をよく読んでいただけに(といってもお金を出して新聞自体を買ったことはありませんが)、そんな有力新聞を発行している会社が簡単に破たんしてしまったことに驚きを覚えています。当時、以前LA TimesのSenior Vice Presidentを務めていたという人の話を聞くことが幾度かありましたが、彼は記者などの編集要員を含む人員を削減することで利益を出そうとするサム・ゼル*1の経営方針を批判しつつも、「発行部数や広告費が減少しつつあるとはいえ新聞はまだまだ儲かるビジネスだ」と言っていました。それが今年の春ごろのことです。

もし彼の言葉が当時の状況を正確に言い当てていたのであれば、そこから半年足らずで新聞業界を取り巻く状況が大きく変わったということになります。もともと、アメリカでは新聞の発行部数が日本と比べて格段に少ないです。LA Timesは80万部強、そしてアメリカを代表する新聞であるNew York Timesでも110万部程度と言われています*2。発行部数が少なければ当然得られる購読料も限られますから、その分、広告収入の減少が経営に与える打撃が大きくなるのでしょう。このブログでも9月にいちどアメリカの新聞業界で広告収入がどんどん減っているというエントリーを書きましたが、それからこんなに加速度的に新聞業界を取り囲む環境が悪化するとは思っていませんでした。車や住宅の売買、そして求人情報といったアメリカの新聞を支えるClassified広告は、まさにネット広告でより効果的に置き換えることができるだけに、今の状況をプラスの方向に変えるのは至難の業と言えるのかもしれません。

*1:ちょうど昨年の今頃にトリビューンの経営権を手にしたアメリカの不動産王

*2:NY Timesも、昨今の経済情勢の中、一部では経営が危ないのではないかともささやかれています。たとえばメディア・パブのこの記事を参照。