IBMのリポート・シリーズ

僕が昨日紹介したIBMの調査結果に特別の注目を払っているのは、それがこれまでIBMグループのコンサルティング部門であるIBM Global Business Servicesによって出版されてきたメディア・エンターテインメント業界に関する一連のリポートの後に続くものだったからです。

Dr. Saul J. Bermanを中心とするグループによってまとめられてきたリポートには以下のようなものがあります。

The end of the TV as we know it: A future industry perspective (2006年3月)
Navigating the media divide: Innovating and enabling new business models (2007年2月)
The end of advertising as we know it (2007年9月)*1

いずれも豊富なデータと鋭い分析に裏打ちされた極めてレベルの高いリポートで、テレビや広告産業の今後の行く末を展望する上で参考にできるようなヒントがたくさん詰まっています。アメリカの事例が中心ですが、ネット配信がテレビや広告のビジネスモデルをどのように揺るがしているのか、その地殻変動に上手く対応するためにはどんなポイントに気をつけなければならないのかといったことにもかなり詳しく考察が加えられています。

初めてこれらのリポートを読んだ時には、こんなに質の高い報告書を定期的に作成してその調査・分析結果を惜しげもなく無料で公開してしまう*2IBMの底力と懐の深さに驚きました。さすが、パソコンメーカーからシステム構築やコンサルティングなどのサービス業へと見事に転身を遂げた会社なだけはあります。

ちなみに、僕にこの資料を読んでみるよう薦めてくれたのは、留学していた時の大学院の先生です。一人ではなく複数の先生から薦められました。しかも彼らはみな学者ではなく、映画のプロデューサーやハリウッドで弁護士をしている実務家の人でした。そこからも、(昨日も書きましたが)IBMのこのリポート・シリーズはアメリカのメディア・エンターテインメント業界で非常に注目されているものだという印象を僕は持っています。

1篇が20〜30ページぐらいあるリポートなので読むのは時間がかかりますが、内容は実践的でとても面白いです。興味のある方は是非目を通してみてください。どれも読む価値がありますが、もしひとつだけを選ぶとすれば僕はNavigating the media divideを推します。また、The end of adversiting as we know itについては、「広告モデルの終焉とはじまり」という題名で日本語にも訳されています(こちらからPDFファイルを読むことができます)。

*1:ここではそれぞれのリポートの概要を紹介するページにリンクを張っていますが、そこからPDF形式のリポート本文をダウンロードすることもできます。

*2:もちろん、その結果としてコンサルティング依頼が増えるだろうというビジネス上の目論見も当然あるのでしょうが。