SNSと大統領選

アメリカの大統領選は、オバマの圧勝という結果に終わりました。メディア・IT関連のニュースサイトなどにも大統領選を総括する記事などが出ているのですが、インターネットが選挙戦に与えた影響の大きさを指摘するものが多くあります。このブログでも以前、今回の大統領選では関連映像のネット配信がメディアや支持者によって盛んに行われているというエントリーを書きましたが、最近見つけた記事をいくつか紹介してみたいと思います。

まず、Wiredには「オバマの勝利は、資金集めと支持者を組織するためのツールとしてのネットの使い方が大きな鍵となった」とする記事が出ています。それによると、オバマ陣営は今回の選挙キャンペーンで300万以上の人から6億ドル(約600億円)の資金を集め、その大半はウェブ上からの寄付だったそうです。オバマは、投票日の1週間ほど前にアメリカの主要ネットワークTV全局のプライムタイムの30分枠を約4億円で買い取って自分のメッセージを伝えるPR番組を放送しましたが、豊富な資金に裏打ちされたからこそできた大胆な戦略だったのかもしれません。また、オバマの支持者がネットを通じて行った選挙関連イベントは15万回に上るんだとか。いかにして一般の人々を選挙キャンペーンに巻き込んで自分のサポーターにすることができるのかということが大統領選では大きな意味を持っていることが伺えます。

オバマ陣営のオンライン戦略を指揮したのは前回2004年の大統領選挙で旋風を巻き起こしたハワード・ディーンのキャンペーンに携わったJoe Rosparsという人で、またオバマ陣営のネット上の総本山と言えるサイトmyBarackObama.comを立ち上げるにあたってはFacebookの共同創業者Chris Hughesの協力を得ているんだそうです。彼らのようにネットの世界のことを知りつくした人が果たした役割というのは、非常に大きなものがあるでしょう。

また、Businessweekは今回の選挙を初の「ソーシャル・メディア選挙(social media election)」だったとする記事を載せています。多くの人々がFacebookTwitter, YouTube, Flickrといったサイトを使って候補者に対する意見や選挙キャンペーンへの参加体験などを発信し、そうした行為が若者たちの間で選挙への関心を高める結果につながったという分析です。たしかに、今回の選挙では「これまで投票をしたことがなかったけど、今回は行ってきた」という人が大勢いたと言われています。史上初の黒人大統領誕生か、という話題性やカリスマ的なオバマの人気によるところも大きいのでしょうが、SNSなどを通じて投票が呼び掛けられたこともそうした人々の足を投票所に運ばせた一因なのかもしれません。

SNSは、その名の通り人々のネットワークを広げ、強化するための手助けとなるサービスです。今回の選挙におけるオバマの勝利は、普通の人々がネットの世界やリアルの世界に持つ「つながり」の中で支援の輪を自発的にどんどん広めていってくれるような仕組みを作り、その勢いを持続させていくことにオバマ陣営が成功したからだと言えるのではないでしょうか。その意味で、「Social Media Election」という呼び名は今回の選挙を上手く言い表しているように感じます。