配信フォーマットの共通化に向けた動き

1週間ほど前のHollywood Reporterにちょっと気になる記事が出ていました。「Digital-delivery standard in sight」と題された記事で、ハリウッドのスタジオたちの間で映像コンテンツのデジタル・ファイルを配信する際のスタンダードとなる規格を策定するための取り組みが始まったという内容のものです。この規格は、仮の名称でDigital Video Package (DVP)と呼ばれているそうです。

一見、「今までそんなことも行われていなかったの?」と思ってしまいそうなことです。でも、「VHS対ベータカム」、「ブルーレイ対HD DVD」、「アナログハイビジョン対デジタルハイビジョン」といった過去の争いに見られるように、関係各社の利権と思惑が入り乱れる映像ビジネスの世界で何らかのスタンダードを決めるということは決してたやすいことではありません。とはいえ、コンテンツとメディアが分離してひとつのコンテンツが様々なプラットフォームで楽しめるようになるという「融合」が進む今の時代に、デジタル配信の規格が好き勝手に乱立しているのはビジネスを行う上であまり都合の良いことではありません。おそらく、こうした状況を背景にして出てきた動きなのでしょう。

このブログでも幾度か取り上げていますが、アメリカではHuluやCBSのように、無料のテレビ番組を自社のウェブサイトだけでなく多数の外部サイトを通じて配信することによってリーチの最大化を図り、自社の広告収入アップにつなげるという新しいネット配信のビジネスモデルが現れてきています。その際に問題となることの一つが、会社によって規格が異なることだと言われています。たとえばYahoo, AOL, Joost, Comcast. Myspaceといった企業と連携してコンテンツを配信してもらうという場合は、各社が独自に決めている映像コンテンツのフォーマットに合わせなくてはいけません。つまり、同じ番組でも複数のバージョンのフォーマットを作って各配信パートナーの基準に従って納入しなければならないのです。これでは、配信先が増えれば増えるほど作らなければならない仕様も増え、手間とコストがかかることになってしまいます。

ネット上の配信ビジネスでポイントとなる「呼び寄せ型サービスから追いかけ型サービスへの転換」(関連エントリー)を進めるためには、このような複雑なことをせずにひとつの規格でコンテンツをいろいろな場所に届けられるような仕組み作りが欠かせないのではないかと僕は考えています。そして、今日紹介した動きは、そのための大きなステップになる可能性を持つものだと思っています。ハリウッドで行われた話し合いには、Disney, Fox, Paramount, Sony, Warner Brosといった主要スタジオが参加したそうです。とんとん拍子で進むような事柄ではないかもしれませんが、今後の動向に注目していきたいと思います。