アメリカのアナログ停波とネット配信

Technobahnに、「テレビのデジタル放送移行に伴うアメリカでのアナログ停波(来年2月の予定)の影響で地上波テレビの視聴者が減少する」という記事が出ていました。ABI Researchという会社の調査結果を紹介したもので、大元のプレス・リリースはここで読むことができます。

それによると、
○ケーブルテレビや衛星放送が普及しているアメリカでも、およそ15%の人がアンテナを立ててテレビを見ている
○デジタル放送への移行に伴い、そのうち70%がアンテナにコンバーターをつけ、10%がケーブルや衛星放送に加入する意向を持っている
○しかし、残りの20%は特段の対策を取らず、テレビが映らなくなるままにするつもりである
というデータが得られたそうです。そして、結果として地上波テレビの視聴率が下がり、代わってDVDや番組のネット配信を利用する人が増えるだろうとABI Researchは結論づけています。

上の数字がアメリカの世帯数にそのまま適用できると仮定して具体的な数字を見てみましょう。アメリカにはおよそ1億1000万の世帯があると言われています。だとすると、アンテナ受信をしている世帯が1650万、そしてデジタル化対策をするつもりがないと答えた世帯が330万ということになります。地上波テレビを視聴する母集団が330万世帯も減ってしまうという換算です。

今回の調査はあくまで「意向」調査ですし(実際にアナログ放送が停まった時にどういう「行動」に出るのかは未知数の部分があります)、調査の時期が今年の4月(アナログ停波まであと10か月ある時期です)、調査がウェブベースで行われた(回答者がある程度ネットに詳しい人に偏った可能性があります)といった条件があるので、単純に上の数字だけを見て信じ込むわけには行きません。ただ、Wikipediaの「DTV transition in the United States」という項目にもデジタル放送への移行によって180万人が電波による放送へのアクセスを完全に失うと推定されているという記述がありますので(10/24現在)、アメリカで予定通り来年2月にアナログ波が終了してしまうと、地上波テレビに大きな影響を与えるのは確かだと言えそうです。そしてそれは、ABI Researchのリポートにもある通り、ABCやCBS,FOXといった地上波TVネットワークの目をいっそうネット配信に向けるきっかけにもなるでしょう。