Youtubeが番組の丸ごと配信に乗り出した

CNETに、Youtubeがテレビ番組の本編を丸ごと配信する事業に乗り出したという記事が出ていました(出所はReuter)。CBSと組んで、「Star Trek」, 「Young and the Restless」 や「Beverly Hills 90210(ビバリーヒルズ高校白書/青春白書)」*1といった過去の人気番組の配信を始めたそうです。

Youtubeはしばらく前からテレビ局や映画スタジオなどと提携を進めて彼らの専門チャンネルを設け、そこにきちんと権利処理された映像を流すということを行ってきました。でも、ほとんどの場合それはコンテンツ・ホルダーによるプロモーションの一環という程度のものでした。こうして番組本編を丸ごと流すことに決めたというのは大きな戦略転換だと言えるでしょう。

このブログでも幾度か取り上げてきたように(関連エントリーこちらこちら)、ネット配信においては素人が投稿する動画よりもプロが制作した番組の方がずっと広告がつきやすくお金になりやすいと言われています。でも、Youtubeが膨大なユーザー数を収益に結びつけるための戦略として「テレビ番組を流す」という手段を選んだのは何だか残念な気がします。そこには斬新さや工夫が感じられませんし、第一それはYoutubeが「(自らの基盤である)ユーザー投稿ビデオだけでは十分な広告収入を得ることができない」ことを認めたということになるからです。

これが例えば「CBSの番組を地理的なアクセス・ブロックをかけずに全世界に配信する。また、配信されるコンテンツはYoutubeの多言語字幕の機能(関連エントリー)に対応させ、ユーザーは5ヶ国語の中から好きな字幕を付加して見ることができる」というぐらいに思い切ったことをしてくれるのなら、さすがYoutube喝采を送るところです。でも、いま日本からYoutubeのCBSチャンネルを覗いてみた限りでは、そんなことは起きていないようです。


<追記 10/13>
このニュースを最初に報じたと思われるReuterの記事を見つけました。ここです(幾度かのアップデートを経て内容が追加されています)。それによると、今回の合意ではCBSが広告販売を担当し、そこから得られる収入を両者で分配することになるそうです。配分の割合などは明らかにされていません。番組本編に加えて広告も用意された形でコンテンツがやってくるのであれば、Youtubeは本当に「ただのパイプ」(英語で言えばdumb pipe)の役割しか果たさないことになります。それはこの会社にとって果たして得策なのだろうか、という気がします。

*1:この番組は元々はFOXが放送したものですが、制作会社のSpelling Entertainmentが現CBSに買収されたため、ネット上ではCBSのウェブサイトから配信されています