アメリカ新聞業界の危機

普段はテレビや映画など映像分野の話題を取り上げているのですが、先週のTech Crunchに出ていたアメリカの新聞業界に関する記事が気になったので、それを紹介します。

この記事は、アメリカの新聞業界の広告収入が危機的状況に陥りつつあることを2つの側面から伝えています。まず、新聞各社が紙媒体から得る広告収入がどんどん減っていること。下のグラフは、四半期ごとの紙媒体の広告収入が前年比でどれほど悪化しているのかを示したものです。

減少幅がどんどん大きくなってきています。2008年第2四半期の収入は88億ドル。これは昨年同時期より17億ドルも少ない額なんだそうです。

そしてもうひとつ打撃となったのが、新聞社のウェブサイトなどに出すオンライン広告の分野でも広告収入が減少し始めたということです。今年の第2四半期のオンライン広告は前年同期比2.4%マイナスの7.77億ドル。こちらの分野で減少が見られるのは初めてとのことです。

この傾向が今後も続くのかどうかはわかりません。でも、紙どころかオンライン広告までもが衰退に向かうのであれば、それは新聞社にとって致命的な出来事になりかねません。例えて言えば、音楽業界でCDの売上に加えてダウンロード販売(iTunesや着うたなど)の売上も減ってしまうようなものだからです。

確かに、映像の分野ではアメリカやイギリスのテレビ局や映画会社は(必ずしも上手く行っているとは言えないにしても)ネット配信から収益を上げるべくいろいろな取り組みを行っていますが、新聞業界からはそんな動きはほとんど見えてきません。大メディアに買収されたり(Wall Street Journal →News Corp)、合理化と経費削減の名目で人減らしをする(最近のLos Angeles TimesのケースとNew York Timesのケース)ぐらいでしょうか。一般的にデジタル技術の普及にビジネスモデルを適応させるのが巧みだといえるアメリカの企業でさえこの有り様なのですから、新聞という事業は本当に苦境に立たされているのかもしれません。