ウィンドウ戦略への小さな挑戦

バラエティ・ジャパンのニュースに、「ディズニーが”Hannah Montana”の映画をDVD発売前にケーブルTVのチャンネルで放送する」という話題が載っていました。これは、2つの意味で興味深い取り組みだと思います。

まず、これはアメリカの映画業界が長年にわたって築き上げてきた「ウィンドウ・リリース・システム」(コンテンツを、劇場→DVD→ペイ・パー・ビュー→有料ケーブル→地上波チャンネル、というようにそれぞれのメディア毎に時期と値段を変えながらリリースしていく手法)の枠組みを自ら飛び越えるというほとんど前例のない試みです。Hannah Montanaといえばアメリカのティーン層に絶大な人気を誇る番組で、主人公を務めるマイリー・サイラスのコンサートを映画化したこの作品は米国内だけで6500万ドルを稼ぎ出した大ヒット作です。DVD販売などでもかなりの収益が見込めるだろう作品をあえてひと月も前にテレビで先に放送するというのは、そこから莫大なCM収入が得られるだろうという計算があってのことかもしれません。

もうひとつ面白いのが、劇場版と同様に3Dバージョンでテレビ放送するという点です。以前紹介したように、アメリカでは映画の3D化が進みつつあります。その中でもコンサートやスポーツは3D効果が高く観客を楽しませることが出来る分野だとして注目されています。最新の技術を使ってもやはりサングラスは必要になるので、3D映画を見に行く場合は専用のスクリーンを備えた映画館に行き、そこでサングラスを掛けて見ることになります。今回のテレビ放送にあたっては、ウォルマートと組んでウォルマートの店舗で無料のサングラスを配布し、それを使って見てもらうことになるそうです。かなり力の入ったキャンペーンになりそうですね。

普通のテレビでちゃんと3D映像が見られるのか(日本では今年3D液晶テレビというのが発売されました。まだ対応番組はほとんどありませんが)、またウォルマートのサングラスを入手できなかった人が見たらどうなるのか(通常、3Dシネマをサングラス無しで見ると画像が2重に見えるのでまともには見られません)なんてことも考えてしまいますが、それでもとにかくやってみることにしたという決断には拍手を送りたいところです。放送は、今月27日にアメリカのDisney Channelで行われるそうです。どれだけの視聴率が得られるのか、視聴者からはどんな反響が来るのか、楽しみです。