オンラインビデオの普及具合

アメリカでは、たびたびビデオ・オン・デマンド(VOD)やオンラインビデオの利用者数や市場の成長見込みを予測するリポートが公表されています。中には数百ドル、数千ドル出さないと中身を読めないものもありますが、誰でも見ることができるものも多くありますし、業界紙などでその概要が報じられている場合もあります。今回はそんなリポートに出てくる数値を見比べながら、どれ程ウェブ上での映像配信が成長分野として期待されているのかを考えてみたいと思います。

今年の2月にSolutions Research Groupという会社が発表したリポートでは、およそ8000万人のアメリカ人(インターネットを使う人の43%)がお気に入りのテレビ番組をインターネットで視聴した経験を持っているそうです。1年前の調査ではその割合が25%だったと言うので、ネットでテレビ番組を見るという行為が急速に広まりつつあることが読み取れます。この報告によれば、毎週ウェブでテレビを見る人の数もネット人口の20%にまで増えているそうです。

Pew Internet & American Life Projectが昨年7月に発表した資料では、インターネットを使うアメリカ人の成人のうち57%がネット上で動画(映画やテレビ番組に限らずニュースやプロモーション映像、広告、UGCなどあらゆるタイプの映像)を見たことがあり、若い年代(18〜29歳)の間ではこの割合が76%にまで高くなると報告されています。このレポートで興味深いのは、オンラインビデオを視聴した経験がある人の57%がその映像へのリンクを他の人と共有しており、同じく57%の人が他の人と一緒にオンラインビデオを視聴しているという結果です。「インターネットはメディアの断片化、パーソナライゼーションを進めるので、オンラインビデオはパソコンの画面を一人で覗き込んで見る傾向が強い」という通説とは反対の傾向を示しているからです。この複数の人でオンラインビデオを見るという行動も、若い年代では73%ととても高い割合になっています。

こうしたユーザーの増加に比例して、オンラインビデオの市場も急成長が予測されています。iSuppliの推定によれば、世界のVOD市場は2004年の7億ドルから2010年には126億ドルへと跳ね上がると見込まれています(この数値は大学のデータベースからアクセスしたものなのでリンクを貼ることができません)。この報告によると2004年には9割以上を占めていたケーブルテレビのVODは2010年にはシェアが5割以下に下がり、かわってIPTVとブロードバンド経由のVODが大きく飛躍すると予測しています。

つい先日のHollywood Reporterに載っていた記事も、世界のVOD市場の成長見込みを紹介しています。もともとはInforma Telecoms & Mediaというリサーチ会社が発表したものです。それによると、2012年までに世界のVOD市場は100億ドルにまで成長すると予測されています(これも、インターネット上のVODに限らず、ケーブルテレビや衛星放送のニア・オン・デマンドなど全てのタイプのVODを含んだ数字です)。そして、収入の50%近くを北アメリカが占め、ヨーロッパを加えると83%という圧倒的なシェアになると伝えられています。

このように、VOD市場、そしてオンライン映像配信の市場はこれから数年のうちにものすごいスピードで伸びていくという見込みがさまざまな機会に述べられています。こんな数字を見せつけられたら、映画スタジオやテレビ局などの”オールド・メディア”が何とかしてウェブ上のコンテンツ配信に乗り出さなくてはと必死になるのもわかる気がします。