オリンピックはインターネットで

The Hollywood Reporterの記事によると、カナダの公共放送CBC(Canadian Broadcasting Corporation)が今年の北京オリンピックを放送に加えてウェブ上のストリーミングで配信すると発表したそうです。CBCは公共放送ですが、政府からの分配金に加えて番組やウェブサイトに載せる広告からも収入を得ています。2007年度の予算では、全体で15億カナダドルの収入のうち9.1億ドルが政府支出金、3.3億ドルが広告や番組セールスからの収入とされています。そして、オリンピックのストリーム配信は広告収入を増加させるための手段と位置づけられています。

記事によると、CBCは自社のウェブサイトでストリーム配信を行うほか、Bell Canadaという国内大手の通信会社と提携して彼らが提供する携帯電話やブロードバンドサービスの中でもオリンピックの映像配信を行うことにしているようです。

テレビで放送するのは主要競技を中心にし、あまり馴染みのない(=人気のない)競技はウェブ上でしっかりとカバーするというCBCの戦略は妥当なものだと言えます。いくらウェブ上の映像配信が成長しつつあるとは言え、視聴者の数で言えばまだまだメジャーな地上波テレビのチャンネルが圧倒しています。一方、テレビのチャンネルは数に限りがあるので放送できる競技の数は限られてしまいます。ただテレビと同じ映像をインターネット上でも流すのではなく、テレビでは紹介きれない競技をネットを通じてナマで、完全にストリーム配信することにより、それぞれのメディアの強みを活かして多様な視聴者のニーズに応えることができます。それは、CBCのオリンピック中継全体の価値を高めることにつながるでしょう。

「オリンピックは放送権の管理に厳く、また国ごとに放送権が販売されるので、国境を簡単に越えてしまうネットでの配信は難しい」というのはもう過去の話のようです。最近は、IP Geolocationという技術の発達に伴い映像を配信する地域を指定することができるようになっています。IPアドレスからユーザーの場所をつかみ、アクセスの可否を判断するシステムです。オリンピックは、放送技術の発展と深いつながりを持っています。東京五輪が日本のカラーテレビ普及に大きな役割を果たしたことは有名ですが、中国は北京五輪HDTV放送を行おうとしていますし、イギリスは2012年のロンドン五輪までには地上デジタル放送への移行を完了しようとしています。ロンドンの次のオリンピックが東京にやってくる、とはあまり思っていませんが、日本でオリンピックのウェブ配信が始まるのはいつ頃になるのでしょうか。