TEDトークのオーディション

タイミング的にギリギリなので、あまり実用的な情報ではありませんが、TEDが公募による講演のオーディションを行うという面白い取り組みがあるので紹介します。

TEDトークに新たな気づきや驚き、刺激を与えてくれるものが多いのは、TEDの運営者であるクリス・アンダーソン*1を始めとした主催者の徹底した発掘と厳しい選考を経てスピーカーが選ばれているからです。キュレーションと呼ばれるスピーカー選びの詳しいプロセスは知りませんが、主にTEDのこれまでのスピーカーやカンファレンスへの参加者などのつながりや情報網を駆使して、面白いこと・すごいことをしている人を見つけ出しているのだろうと思います。今年の2月に行われたTED2011では、ビル・ゲイツとジュアン・エンリケ(著名な生命科学の研究者であり投資家)を「ゲスト・キュレーター」として迎え、新たな視点とネットワークから登壇者を掘り起こしていました。

これまでは、仮に「TEDのステージに立ちたい」と思っても自分から売り込むルートがありませんでしたが、先日TEDは、来年開催されるTED2012に向けたスピーチのオーディションを行うという発表をしました(こちら)。先に書いておくと、申し込みの締め切りがアメリカ東部時間の4/25(月)23:59までなので、これを読んで申し込みをしようと思っても時間はほとんどありませんが*2、まずは1分間の動画を申請フォームと合わせてオンラインで送り、1次選考を通った人が5月末にニューヨークでプレゼンを行う、というスケジュールになっています。

TEDが期待しているのは、こんなプレゼンだそうです。
・「スライドの嵐」−言葉よりもイメージ(画像・映像)が多いプレゼン
・想像力豊かなサウンドトラックとともに語られるトーク
・専用に作られたアニメ動画とともに語られるトーク
・スピーカーの言葉とスクリーンに映し出されるものが上手く「振付け」されているもの
・即興/観客とのインタラクション
・中身の濃い、焚き火の周りで語られるようなストーリーテリング
・音楽、話し言葉、ダンスなど、驚かせてくれるような素晴らしいパフォーマンス
・電撃のような速さの熱弁、知的な喜劇、ミステリー
・優れた新しい発明
・「広める価値のあるアイデア」を元にした、オーソドックスなトーク

より正確なニュアンスは、上に挙げたリンク先で原文を読んでいただくとわかりやすいかと思います。また、いくつかの点については、既存のTEDトークを用いた「例えばこんな感じ」という例示が、数日前にアップされた「FAQ」(こちら)に載っています。

個人的には、テクノロジーを用いてトークを上手く演出するようなものが求められている一方で、昔ながらの(そして今はほとんど廃れてしまっている)ストーリーテリングのスタイルにも言及されているあたりが、非常に興味深く感じます。選考を経てどんなトークが来年登場するのか、気の早い話しですが楽しみなところです。と同時に、締切まで1日しかないところでお知らせをしてもあまり実際の役には立たないだろうとは十分に承知しつつ、TEDの場に、(来年でも再来年でも)素晴らしい日本からのスピーカーに登場してほしいなとも期待してます。

*1:ロングテール」や「FREE」の著者とは同名の別人

*2:TEDがこれを発表したのが4/15なので、元々あまり余裕がない話でした。自分ももう少し早く書きたかったのですが、時間が取れませんでした。