インターネットのトラフィック予測

eMarketerのサイトに、世界のネット・トラフィックの推移を予測する記事が出ています。元データは、Cisco Systemsが今年6月に発表したものだそうです。これまであまりこういうデータを見たことがなかったので、興味深く記事を読みました。

下の表で示されているのは、世界のトラフィック使用量(ひと月あたり)の予測値です。

単位はペタバイト。ギガバイトの100万倍です。今年の推定値は、ひと月あたり5315ペタバイトとなっていますから、ちょっと想像もつかないほどの量です。*1

内訳を見てみると、P2P関連が2361ペタバイトとおよそ45%を占め、次いでパソコン上のオンラインビデオが1346ペタバイト(25%)、ウェブ・eメール・データが999ペタバイト(19%)となっています。また、この表にはテレビ上のオンラインビデオという項目も含まれています。これは、セットトップ・ボックスなどを使ってネット上の動画をテレビで見たときのトラフィックを指していて、今年の推定は330ペタバイト(6%)です。P2Pとパソコン・テレビ上のオンラインビデオをネット上の動画配信と見なすと*2、今年の時点でネット上の総トラフィックの75%が動画関連ということになります。そして、この傾向は今後さらに強まると予測されています。

予測の最終年である2012年のデータを見ると、用途のトップ3がP2P(6740ペタバイト)、パソコン上のオンラインビデオ(6216ペタバイト)、テレビ上のオンラインビデオ(3529ペタバイト)となっていて、オンライン動画がネットの総トラフィック(20331ペタバイト)に占める割合は81%にまでなります。特に、パソコン及びテレビを介したオンラインビデオが今後大きく伸びていくと予測されていることがわかります。

また、総トラフィックを見ると、今年から2012年までの間に4倍近く(5315→20331ペタバイト)まで増えると考えられています。技術の発展が回線増強のコストを減らしたりコンテンツの圧縮度を高めるのにどれほど役に立つのかはよくわかりませんが、この数字だけを見ると、アメリカでブロードバンド接続の定額制を取りやめる動きが出てきていたりする(関連エントリー)背景というのがいくらか見えてくる気がします。

一方で、データ量に応じて課金されるというモデルは「広告つき無料配信」という現在主流になっているオンラインビデオの事業モデルに大きな影響を与えるというeMarketerの主張ももっともだと感じます。記事の最後は、こう締めくくられています。

問題は、オンラインビデオとそれに関連する広告にも及ぶかもしれない。もし使った帯域に応じて追加料金を払わなければいけないのであれば、多くの人たちはネット上の動画、特にオンラインの動画広告と密接な関係がある長尺のテレビ番組や映画をあまり見たがらなくなるだろう。「もし接続費(bandwidth costs)が帯域の使用量によって決まるのであれば、ユーザーはネット上の広告を不快に思うようになるだろう。なぜなら、そうした広告も帯域を消費するからだ。」とHallerman氏*3は言う。「動画広告はデータ量が大きいので、特にそうした反応が起きるだろう。」

*1:単純に比較できる数値ではないかもしれませんが、参考まで、総務省は今年5月の日本のインターネット・トラフィック(ブロードバンドトラフィックのダウンロード総量)を880Gbpsと推定しています(総務省の関連PDF資料)。

*2:P2Pでは音楽のやり取りなども行われていますが、音声は動画と比べると容量が小さいのでここでは全て動画と見なします。

*3:eMarketerのSenior Researcher。