オンラインビデオの広告規模予測を見直し

eMarketerが、アメリカでオンライン・ビデオに費やされる広告費の成長予測を見直しました。以前の予測がどれほどだったのかについては触れられていませんでしたが、Silicon Alley Insiderによると、今年5億ドルの広告支出があるだろうという見直し後の予測は以前と比べて64%も低い数値なんだそうです。eMarketerは、彼らが主に使用しているデータ・ソースの計測方法が変わったためと説明していますが、それだけでこんなに大きな変化が出るのなら、そもそもそのデータに信用性はあるのかという疑問もわいてきます。

このブログでも幾度も紹介しているように、アメリカでは、メディアやエンターテインメント、通信などに関するさまざまな予測や実績が、データとして数字で表されます(恐らく、他の分野でも言えることだと思います)。eMarketerのように、そうした調査や分析を専門に行う会社の層もたくさんあり、そうしたところが発行するリポートなどの全文を読もうとすると高いお金を払わなくてはいけないことも多いのですが、その要約やさわりの部分だけであれば大抵はネット上で無料で読むことができます。日本でも最近は「ビジネスマンは数字で物事を考えなくてはいけない」なんてよく言われてますが、アメリカではそのベースとなるデータの層の厚さとアクセスのしやすさが日本とは比較にならないほど充実しています。

でも、今回のような事例を見ると、あまり数字だけを一人歩きさせてはいけないなとも感じます。もともと予測というのは状況に応じて変わっていくものですが、もともとの調査方法はどれほど信頼がおけるものなのか、そこから出された結果は中立の立場から出されたものだと言えるのか(何らかの意図が含まれている場合もあるのではないのか)といったことは、なかなか数字を読むだけではわからないからです。こうした予測は、有用なデータとして参考にしつつも、それに飲み込まれてしまうことがないようにしないといけないなと感じます。

さて、話を元に戻して、改訂後の予測はこのようになっています。

下方修正されたとはいえ、今後5年間で凄まじく伸びていくという見通しは変わっていないようです。2007年にはテレビ広告の総額に対して0.5%,インターネット広告に対して1.5%でしかなかったオンラインビデオの広告費が、2013年にはそれぞれの7.6%、9.8%まで増えるとeMarketerは予測しています。

一方、先に紹介したSilicon Alley Insiderの記事も、なかなか面白いポイントを突いています。彼らは、いろいろなデータを基にして今年のYoutubeの広告売上を2億ドル、テレビ番組や映画などの配信に特化したHuluの広告売上を9000万ドルと推定しています。もしこの推定とeMarketerが予測する今年の全米のオンラインビデオ広告市場(5億ドル)がともに正しければ、5億ドルからYoutubeとHuluに出される広告費を引いた2.1億ドル程度をABCやCBS,Yahoo, Joost, Veohといった残りのオンライン配信事業者たちで奪い合うことになる、という点です。そうなれば、かなり激しい競争が繰り広げられることになるでしょう。

景気の減速感が強まる中、ネット広告自体の成長スピードが鈍化していると言われています。広告をつけることによって無料でコンテンツを提供して一気にユーザー数を増やしてきたアメリカのオンライン・ビデオですが、それが収益性のあるビジネスとして育っていくのかどうかは、まだ予断を許さないようです。