TEDの電子書籍

TEDが電子書籍「TED Books」の刊行を発表しました。第一弾として、TEDカンファレンスにスピーカーとして登壇したことのある3人の、著作がAmazonKindle Store上で刊行されています。タイトルは以下の通りです。

「Homo Evolutis」 Juan Enriquez & Steve Gullans
「The Happiness Manifesto」 Nic Marks
「Beware Dangerism!」 Gever Tulley

これらは、TEDトークのテキストを書き起こしたものではなく、新たに書かれたものだということです。

TEDのウェブサイトに出版の経緯や目的が記されています(こちら)。通常の本の三分の一程度もしくはそれ以下の長さ(上記3冊をは上から58、40、31ページ)で、アメリカでは1冊2.99ドルで購入することができます。日本だと、Kindleで一般の電子書籍を買う時と同様、2ドル上乗せされて4.99ドルになります。

TEDのサイトにある説明を引用します。

TEDトークの成功は、世界中の何百万という人々が新しいアイデアを欲していることを示しました。トークの多くは、より深くその話題を知りたいという欲求を生み出します。しかし皆がそのテーマについて1冊の本を丸々読む時間を持っている訳ではありません。TED Booksはそのギャップを埋めます。従来の本は少なくとも6万語ありますが、TED Booksは2万語以下です。ひとつのアイデアが十分に伝えられ、しかも読み終わるのに1週間もかける必要がありません。(中略)これは、読書のレベルを下げるということなのでしょうか?私たちは、TED Booksを読む人はレベルが下がるのではなく上がるのではないかと思っています。雑誌を読んだりクロスワード・パズルをする代わりに短くて中身の詰まった本を読むのです。私たちが目指すのは、今の時代の「関心時間(attention span)」に合わせた形でアイデアに接してもらう方法を作ることです。

「原則18分以下」というルールの下でスピーチを行うTEDトークが広く受け入れられたことに基づき、濃縮した短い本をネット上で流通させようという試みのようです。

自分も1冊購入してみましたが、まだ読んでいないので内容の濃さについてはここでは触れません。ただ、読書に充てられる時間が限られていて、読みたいけれど読み切れていないという本がどんどん溜まっていく人間の一人として、このような形の書籍には非常に興味があります。

TEDの大きな強みとなるのは、TED Booksの本と、著者によるTEDトークを互いに薦め合うことができるという点でしょう。実際、公開されている著者たちのTEDトークに「TEDbooks」というタグをつけるだけで、簡単に著者のトークがまとめられたページが作られています(こちら)。

TEDトークとは違いTED Booksは有料ですが、アメリカ国内の2.99ドルという値段であれば、もちろん内容がしっかりしていればという前提の上でですが、有料であることはあまりTED Booksが広まる障害にはならないのではないかという気がします。ただ、Kindleのルールに則って日本からだとプラス2ドル余計にかかるというのは、こうした元値が安い本にとっては高すぎます。これはTEDというよりAmazonに対する不満ですが、短い本はデータのサイズも小さいはずですから、せめてプラス1ドル程度に改善してほしいものです。もっと言うと、Kindleではない他のプラットフォームでもTED Booksを販売し、世界どこからでも一律2.99ドルで入手できるようにしてくれないかな、という気がします。