Flashがテレビで見られるようになると

Adobeが、ラスベガスで開かれているアメリカの放送局の一大イベントNAB Showで、Flashの技術をネット対応テレビやセットトップボックスなどに組み込んでいくと発表しました(CNET Japan, New York Timesの記事などを参照)。IntelComcast、Disney Interactive、Netflixなどからの協力も取り付けているそうです。

ご存じのとおり、Flashはオンライン動画で圧倒的なシェアを誇る規格です。YoutubeもHuluもBBCのiPlayerにおけるストリーミング動画も、Flashを採用しています。上記CNET Japanの記事に「(テレビでFlash動画が見られるようになれば)YouTubeの動画ライブラリにおいてテレビ視聴用に特別にエンコードされた一部ではなく、そのライブラリ全体にテレビから完全にアクセスできるようになる」と書かれているように、Flashフォーマットがテレビに撮り込まれれば、いわゆるネットとテレビの融合にも非常に大きなインパクトを与えることになるでしょう。今後、「インターネット対応」を謳いつつ一部の閉ざされたネットサービスしか利用できないことの多い今の中途半端なネット対応テレビがフル対応テレビへと移行していくのであれば、Flash動画を再生できることはその必須条件となるはずです。

ただしこれは、コンテンツ・ホルダーや配信事業者にとっては嬉しいことであると同時に悩ましいことでもあるのかなという気がします。まず、ひとつのフォーマットでコンテンツをネット向けにもテレビ向けにも送り出せるようになれば、媒体ごとの仕様に合わせたエンコードなどをいちいち行う必要がなくなるので、コスト面でも手間の面でも喜ばれるのは確かでしょう。一方で広告収入に依存するネットワークTVやサブスクリプション制の維持が死活問題となるケーブルテレビ業界などにとっては、(少なくとも今のところは)あまりお金にならないネット動画がテレビ画面での存在感を増していくことは決して歓迎できることではないでしょう。その点でComcastやDisneyなどの名前がパートナーとして挙がっているのは興味深いところです。また、上記NYTの記事では、Flashと競合するフォーマットであるSilverlightの普及を目指すMicrosoftが何らかの対抗策を打ち出してくるのではないかという見方も紹介されています。いずれにしても、今年のCESなどでも示されたとおりテレビのネット対応化に対する機運が高まる中で(関連エントリー)、Flashをテレビに組み込むという動きがどのように広まっていくのかに注目が集まりそうです。