Screen DigestがHuluの広告収入を下方修正

昨年11月に、Screen DigestのアナリストArash AmelがHuluの広告収入見通しを発表したというエントリーを書きました(こちら)。Huluの2009年の広告収入は、Youtubeのそれに並ぶ1.8億ドル程度になるだろうという予測です。でも、最近のBusiness Weekに出た記事("Hulu Attracts Crowds but Not Ads")によると、彼はその見通しを大きく引き下げているそうです。今の予測では、Hulu、Youtubeともに今年の広告売上は1.2億ドル程度になるだろうとのこと。前回の予測よりも1/3低い数値になっています。

Screen DigestはHuluの2008年の広告収入を7000万ドル程度と予測していましたから、仮に今年の収入が本当に1.2億ドル程度だったとしても大幅な増加であることに変わりはありません。でも、この引き下げはHuluにとって結構痛い出来事なのではないかと思います。設立間もなく株式公開もしていないベンチャー企業にとって、高成長のホットな企業であるというイメージは最大の武器となるからです。「下方」とか「マイナス」という評価は、上昇を目指すスタートアップ企業にとっては何としても避けたいところなのです。

実際、昨年3月に本サービスを開始して以来、Huluを表すキーワードはずっと「成長」や「拡大」でした。利用者数では驚くような成長を続けてきましたし(関連エントリー)、コンテンツの調達先や配信先も順調に拡大してきました。また、実現はされていませんが早期からサービスの海外展開を図るなど、まさに絵に描いたような前向きの拡大路線をひた走ってきたのです。

その状況のちょっとした異変が起きたのが今年の2月にTV.comとBoxeeからのアクセスを遮断した時でした(関連エントリー)。広く一般に知られる中では初めてHuluが後ろ向きの手だてを講じたのです。今回の収益予測の引き下げは、それに続く打撃となるでしょう。

これが、今の不況のせいなのか、Huluへの期待が薄れてきたからなのか、それとも動画のネット配信というビジネス自体の見通しが格下げされたのかはよくわかりません。ただ、上記のBusiness Weekの記事で、最近News CorpやNBCの作品でHuluに載らないものやHuluでの提供開始が通常(放送の翌日)よりも遅れるものが出始めていることを挙げて「今年はネット配信に対するコンテンツ・オーナーからの規制が強まるだろう」というアナリストの見方が紹介されているように、広告付きの無料動画配信というモデルに対するコンテンツ保有者の態度が厳しくなっていることが一因なのかもしれません。

Huluにとっては、強まるコンテンツ・オーナーからの圧力を受けて利用者にとってのサービスの魅力を薄れさせてしまうことになる(=成長の鈍化につながる)のか、それともDisneyとの提携話(関連エントリー)などをまとめて成長軌道を持続できるのか、これからが肝場の1年となりそうです。